ガオさんはちょっぴりしょげて電話を切った。

「彼氏にまた怒られちゃった。『バカなこと考えるな』ですって」

 ゼンゴくんが説明してくれる。

「ガオさんの彼氏はガオさんと人前で歩くのも恥ずかしいくらい、シャイなんだそうです」

 それは他に女がいるんじゃないのーと心の底で思ったが、それを察したのか、ガオさんは、携帯に入っている彼氏の写真を見せてくれた。

 おおっ。これは……。萩庭桂太ががははと笑いながら言った。

「これ、タケノウチユタカっていうかさー。ほら、お笑いの人でさー……」

 ここから先は書かないほうがいいと思う。……翻訳ソフトが怖い。

 あたりが暗くて、いったいどの町に連れて行かれたのかもわからなかった。ガオさんのパーティー用マンションは閑静な住宅街にあった。しかし一歩部屋に足を踏み入れたとたん、我々は、おおっ、と叫んだ。まるで川越あたりでキャバクラの経営に成功したホストの部屋のよう、とでも言うべきか。

 黒い内装、四角い埋め込みのシャンデリア。ガラスのダイニングテーブル。黒い大きなソファーにはベルベットの黒いクッション。しかもルイ・ヴィトンのでっかいロゴがスワロフスキーでぴかぴかしているのである。

「ようこそ台北へ」

 惜しげもなくシャンパンをいきなり2本開けてくれた。この席に、音楽プロデューサーで北京在住のシャーマンさんと、映画のプロデューサーで、来年『パンダマン』を映画化するちょっとイケメンのOTISさんが合流してきた。シャーマンさんはMCハマーの格好をした竹中直人みたいな人である。萩庭桂太の写真をPCで見て驚いていた。

「なぜ人の心を写せるんだ。内面が写っているよ」

 私は萩庭桂太がこんなときは意外にアピールしないのにイライラして言った。

「ハギニワさんは400万枚以上売れた浜崎あゆみのジャケット写真も撮っているんですよ」

「おおおっ、すごいじゃないか。ぜひいつか仕事をしよう」

 ほんとか嘘かはわからないが、それぞれができること、やりたいことを主張し、それにはこうしたらいいとか、こんなルートがあるとか、話が膨らんでいく。やっぱりバブルのときみたいだ。景気は、夢を煽る。

 気づくとガオさんは夜中の2時だというのに夜食の麺まで作って出してくれた。美味しかった。仕事、人脈、男、お金。すべてを手に入れて夜食に麺まで作ってくれる。なんてよくできた女性であろうか。私は完全降伏した。本当にあんなことを書いて悪かった。しかしそう思って何気なく彼女を見ていると、やたらとイケメンプロデューサーにしなだれかかっている。ゼンゴくんがまた通訳してくれた。

「私、酔っちゃったみたい……とか言っています」

 この女め、と私はこめかみがピクつくのを必死におさえた。

 翌日、我々は本格的に取材をスタートし、またまた写真のチェリーこと夏如芝を始め、美女たちに出会うことになる。

  • 出演:夏如芝(チェリー・シャ)

    公式には生年月日は公表されていないが、台湾生まれの29歳。モデルを経て現在は伊林の女優部に所属する。日本での問い合わせは、[OFFICE303] ENTERTAINMENT&MODELの問い合わせフォーム参照。 http://www.office303.jp/

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

  • コーディネーター:木山善豪

    アジアエンタテイメントのコンサルティングを核とし、中国語圏のエンタメビジネス全般のサポートを手がける。台湾と日本の血統を合わせもつスタッフで構成された組織で、両国での幅広いネットワークとバランス感覚をもつ。
    [OFFICE303] ENTERTAINMENT&MODEL http://www.office303.jp/

取材協力:
エバー航空 http://www.evaair.com/html/b2c/japanese/
「ハローキティジェットが羽田~台北にも登場!」

台北馥華商旅(FORWARD HOTEL) http://www.imvr.net/hotel/fwhotelsj/

ギア・ハウス、ギア・サポート(東京) http://www.gearhouse.co.jp/

撮影:萩庭桂太