この原稿は六本木近くにある台湾カフェFU-ENで書くことにした。お供は生姜プリンと東方美人というお茶である。

 台北取材から1カ月経ったが、ここで大久保麻梨子ちゃんとの楽しいデートを思い出すべく、味覚から記憶を刺激しようという魂胆だ。

 前回5月の台湾取材で、萩庭桂太が楽しみにしていたことの一つが大久保麻梨子ちゃんとの再会であった。どうやらいずれ写真集にしようというもくろみもあるらしく、撮影には、半日が用意されていた。

 スタッフは11時に集まることになっていたが、私は萩庭桂太にこう提案した。

「二人で撮ってきたらどうですか」

 その言葉を待ってましたとばかりに萩庭桂太は言った。

「そうだよね。麻梨子ちゃんは中国語しゃべれるしね」

 いや、そういうことじゃなくてね……。私は萩庭桂太の写真に対して一つだけちょっぴり不満なことがあったのである。それは何というか、とってもきれいだけどあんまり官能的でないということだ。個性といえば個性だけれど、46歳にもなって「なんかあるんじゃないのー」と誤解を抱かせるような写真がないというのは、写真家としてはいかがなものか、と常々思っていた。

 しかしそういうことを面と向かって意見すると、きっとまたスネ夫の口になって反論するだけなので、とりあえずシチュエーションを提供してみたわけである。そしてもっとホンネを言えば、私は自由行動で買い物に行く時間が欲しかったのであった。

 大久保麻梨子ちゃんは大量の洋服を大きなバッグに詰めて現れた。

「おはようございまーす」

 そして前回のように「せんぱーい!」と私に愛想よく挨拶してくれた。そう、麻梨子ちゃんは私にとっては神戸女学院大学の後輩なのである。

 我々は夕方に合流する約束をしてから、「頑張ってねー」と解散したのであった。

  • 出演:大久保麻梨子

    1984年9月7日に長崎県佐世保市生まれ。兵庫県で大学時代までを過ごす。2003年に神戸市内でスカウトされてデビュー。同年、三洋物産主催の「Sea Story Audition 2003 マリンちゃんを探せ!!」でグランプリに。グラビアアイドルとして本格デビュー。テレビでは、バラエティ番組やドラマに出演したが、2008年にグラビアアイドルを引退し、女優への転身を表明。2011年より台湾へ移住し、所属事務所も台湾の事務所に移る。
    http://ameblo.jp/marilog0907/

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太