台北お買いもの散歩
大久保麻梨子
- Magazine ID: 1080
- Posted: 2012.06.25
というわけで、私はコーディネートをしてくれていたゼンゴくんとヨネハラさんと一緒に、まず台北で一番安いマーケットのある地下街へと繰り出した。
「洋服とか300円くらいであるんですよー」
ゼンゴくんは彼氏のいる男性なので、キャラが女子である。
「きゃっ、可愛いー」
私はラインストーンのついたサンダルを600円で買ったり、ヘンな傘屋さんの前でアメフトのヘルメット型の傘を見つけて写真を撮ったりと、やっと私らしい人生の享楽を味わっていた。買い物なくして何が旅であろうか。金額が問題なのではない。けったいなものでもいい。そこで何かを買うことこそが、大事なのである。
「チャイナカラーのシャツが欲しいんですけど」
私はゼンゴくんがいつも羽織ものとして着ている紺色のチャイナカラーのシャツを思い出して言った。
これが事件の始まりであった。
私は連れていったもらった店がかなり気に入り、試着に試着を重ねた。そして赤、紺、白と3枚を計5000円ほどで買い、そのうちの赤いチャイナカラーに着替えて、店を出た。着替えて歩き始めたとき、20年近くお守りにつけている24金の小さな蜂のブローチがないことに気づいたが、そのときはあまりの楽しさにこう考えた。
「昨日の服につけっぱなしにしてきたに違いない。部屋に戻ったら確認しないと」
その後、私たち3人は、誠品書店という今台湾で一番お洒落なビルに行って自著の『キティの涙』の台湾版『KITTY的眼涙』が面出しで売られているのを見に行ったりした。
この書店は巨大なビルで、3階以上のフロアが書店であるが、2階以下は高級ブランドを扱うセレクトショップやセンスのいい雑貨を集めた店などがゆったり入っている。日本では旭屋書店がなんばパークで雑貨と本を売る店を展開しているが、それをもっと高級路線にしたような感じである。これからの書店の形はこうなっていくのかもしれない、とぼんやり思った。お隣の阪急百貨店では、台湾佳人特集の第1回で登場してくれたアイリスちゃんがプロデュースするバッグの店も発見した。
誠品書店、阪急百貨店、Wホテル、台北101。この界隈は台北で最先端の街らしい。そこにある建物は洗練された西洋かぶれなのだけれど、今の日本にはない新しいものへの昂揚感が満ちていた。
ゼンゴくんとヨネハラさんとも別れ、私は一人でこのあたりを満喫した。
仕事のこともブローチのことも、すっかり忘れていた。
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出演:大久保麻梨子
1984年9月7日に長崎県佐世保市生まれ。兵庫県で大学時代までを過ごす。2003年に神戸市内でスカウトされてデビュー。同年、三洋物産主催の「Sea Story Audition 2003 マリンちゃんを探せ!!」でグランプリに。グラビアアイドルとして本格デビュー。テレビでは、バラエティ番組やドラマに出演したが、2008年にグラビアアイドルを引退し、女優への転身を表明。2011年より台湾へ移住し、所属事務所も台湾の事務所に移る。
http://ameblo.jp/marilog0907/ -
取材・文:森 綾
1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
撮影:萩庭桂太