大久保麻梨子ちゃんは、すっかり台北通である。

 実はその日は台北でも「母の日」であり、レストランはまったく予約がとれないほどどこも満員だった。

「小籠包が食べたい」という萩庭桂太の要望で有名店に立ち寄ってみたものの、50分待ち、と言われる。そこで麻梨子ちゃんは、客は地元の人がほとんどという小籠包の別の店を提案してくれた。

 かの有名店から歩くこと5、6分。その店にはするりと入れた。厨房の前を通り過ぎると、コックさんたちが美しい麻梨子ちゃんに手を止めて笑顔を送ってくれる。連れの者ですっていうだけで、なんだか気持ちがいい。

 皮がやや分厚くてもちもちした小籠包はすこぶる美味であった。大好きな海老入りも頼んでしまった。

 たらふく頂いた後は、やはり麻梨子ちゃんおすすめのマンゴーかき氷を食べることになった。

 これがものすごく大きい。日本のかき氷の2倍半はある。ところが台北の人たちは、おじさんも子どもも、これを一人で1個頼んで食べるのである。お腹が冷えないのであろうか。

 我々は3人で一つ食べることにした。萩庭桂太は、本当は麻梨子ちゃんと2人だけで食べたかったとは思うが、それなりに楽しげに食べていた。食べ終わると、夢見るように言った。

「旅先って光が違うように見えるよねえ。初めてニューヨークに行ったとき、すべてが薄い黄色のなかにあるように見えて、感動したんだよねー」

 私はあきれて言った。

「いや、それたぶん、電球の電圧が違うからですよ」

  • 出演:大久保麻梨子

    1984年9月7日に長崎県佐世保市生まれ。兵庫県で大学時代までを過ごす。2003年に神戸市内でスカウトされてデビュー。同年、三洋物産主催の「Sea Story Audition 2003 マリンちゃんを探せ!!」でグランプリに。グラビアアイドルとして本格デビュー。テレビでは、バラエティ番組やドラマに出演したが、2008年にグラビアアイドルを引退し、女優への転身を表明。2011年より台湾へ移住し、所属事務所も台湾の事務所に移る。
    http://ameblo.jp/marilog0907/

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太