過日、大久保麻梨子は久しぶりに日本で撮影の仕事をした。すでに掲載された某週刊誌での続編のグラビア撮影だ。

「5年ぶりに同じメンバーで葉山で撮影したのですが、同窓会のようで。撮っている時間よりも打ち上げが長かったくらいでした。そのときも楽しかったけれど、掲載されて『台湾に興味をもった』とか『台湾が好きになりました』といったメッセージをたくさんいただいたんです。この国を知ってもらったらもっと好きになるという確信が湧いてきたんですね。じゃ、私ももっと台湾で頑張って、知ってもらいたいと思うようになったんです」

 今は半年に一度、就労ビザを更新しながら現地で女優を続ける。多くのCMに出演し、ドラマの話も舞い込んでくる。

「まだちゃんと決まってはいないのですが、日本統治時代のドラマの話があるんです。台詞に日本語も中国語も台湾語も出てくるドラマ。とてもやってみたいです」

 それは彼女にしかできない気がする。

 生きる糧を得る最も有効な手段は「~にしかできない」を得ることだ。大久保麻梨子という人は、飛び込んだ異国で、大久保麻梨子にしかできない仕事を得ようとしている。私はそのことに深く感銘する。

「台湾には好客という文化があります。外国人に対して親切にするという文化です。お客様をもてなすのが好き、という意味。こちらに住んでなじんでくると、今度は外国人という意識もなくなって、だんだん人と人というふうになりつつあります。それでもみんな優しい。そこがこの国の好きなところかもしれません」

 とはいえ、合わせようと頑張っているのではと思うこともあると笑う。

「稀にじんましんが出たりすると『私って知らず知らずにストレスためてるのかしら』と思ったり。でも、それにも慣れていかないと、と思います。強くなれ自分! みたいな」

 優しくあり続けるために強くなろうとする、大久保麻梨子ちゃんが、私は好きだ。

 心が折れそうになったら思い出そう。「せんぱーい」と現れるあのはじけるような笑顔を。

  • 出演:大久保麻梨子

    1984年9月7日に長崎県佐世保市生まれ。兵庫県で大学時代までを過ごす。2003年に神戸市内でスカウトされてデビュー。同年、三洋物産主催の「Sea Story Audition 2003 マリンちゃんを探せ!!」でグランプリに。グラビアアイドルとして本格デビュー。テレビでは、バラエティ番組やドラマに出演したが、2008年にグラビアアイドルを引退し、女優への転身を表明。2011年より台湾へ移住し、所属事務所も台湾の事務所に移る。
    http://ameblo.jp/marilog0907/

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太