しなやかな筋肉 (2/2)
山中千尋
- Magazine ID: 1100
- Posted: 2012.07.13
バックヤードで待機していると、演奏を終えた山中がステージから戻ってきた、手ごたえがよかったのだろう。表情が明るい。腕や肩が汗で光り、それが妙にエロティックだ。バランスよく身にまとった筋肉はアスリートをイメージさせる。
ピアニスト、山中千尋のすごさの1つは、ハードヒッターであることだ。
ジャズのピアニストは、ざっくりと2タイプがある。
オスカー・ピーターソンやマッコイ・タイナーに代表されるハードヒッターと、ビル・エヴァンスやハービー・ハンコックのようなスペースを生かしたデリケートなタッチを主に演奏を組み立てるタイプ。オスカーやマッコイのようなハードヒッター系は、鍵盤をガツン! と叩くので、当然極端に身体が大きい。ピアノの下に大腿部が入りきらないほどだ。
そんなジャズ界にあって、山中は小柄なアジア人女性であるにも関わらず、タッチは強く、激しい演奏を聴かせる。軟らかく効率よく働く筋肉で全身を覆い、身体のバネを利用して鍵盤を叩く。そこに山中だけの音が生まれる。
ビルボードライブ公演の後またヨーロッパに渡った山中が次に帰国して新譜のナンバーを演奏するのは、7月28日の「真夏の夜のJAZZ in HAYAMA 2012」。そして、9月にはジャパン・ツアーがある。
神奈川県の葉山マリーナで開催される「真夏の夜のJAZZ in HAYAMA 2012」では、『ビコーズ』からのナンバーをトリオで演奏し、今年も稲垣潤一との共演が行われる。
「稲垣さんの歌はすごく安定しているのが魅力です。ライヴでもCDのような安定感で、揺れも少ないんです」
共演する曲は今検討中だという。
「稲垣さんの曲はCDでチェックしていきますが、今年もオリジナルを意識しないようにしたい。原曲を気にしすぎると、演奏が小さくなってしまうからです。稲垣さんとは、箱根の彫刻の森のイベントで初めてご一緒して、昨年の葉山があり、その後、丸の内のコットンクラブでやり、今回は4度目。共演を重ねてきたからこその呼吸を聴いていただきたいですね」
『ビコーズ』 2012.07.18発売
【左】初回限定盤 SHM-CD(+DVD) 3,500円(税込)UCCJ-9126
【中央】初回限定盤 SA-CD ~SHM仕様~ 4,500円(税込) UCGJ-9004
【右】通常版 SHM-CD 3,059円(税込) UCCJ-2102
http://www.universal-music.co.jp/chihiro-yamanaka/
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出演:山中千尋
福島県生まれ、群馬県育ち。ジャズ・ピアニストで作曲家でアレンジャーでプロデューサー。米ボストンのバークリー音楽大学を首席で卒業し、アルバム『リヴィング・ウィズアウト・フライデイ』でデビュー。『アピス』『レミニセンス』などのアルバムを発表。7月18日に、「イエスタデイ」「ミッシェル」「ユア・マザー・シュッド・ノウ」などビートルズのカヴァーにオリジナルの「インサイト・フォーサイト」「イット・ワズ・ア・ビューティフル・ミニット・オブ・マイ・ライフ」を加えた10曲(通常盤/SACD~SHM仕様~盤はボーナストラック入りで11曲)を収録した『ビコーズ』をリリース(ユニバーサル ミュージック)。7月28日(金)に神奈川県の葉山マリーナで開催される「真夏の夜のJAZZ」に出演。9月7日からはジャパン・ツアーがスタート。
山中千尋 オフィシャルサイト http://www.chihiroyamanaka.com/
山中千尋 公式twitter https://twitter.com/#!/ChihiroYamanaka
真夏の夜のJAZZ in HAYAMA 2012 http://microsites.universal-music.co.jp/event/jazz2012/ -
取材・文:神舘和典
1962年東京都出身。音楽を中心に書籍や雑誌のコラムを執筆。ミュージシャンのインタビューは年間約70本。コンサート取材は年間約80本。1998年~2000年はニューヨークを拠点にその当時生きていたジャズミュージシャンのほとんどにインタビューを行った。『ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。
新潮新書 http://www.shinchosha.co.jp/writer/1456/
幻冬舎新書 http://www.gentosha.co.jp/book/b4920.html
撮影:萩庭桂太