「ビコーズ」である理由 (2/2)
山中千尋
- Magazine ID: 1094
- Posted: 2012.07.10
「ミッシェル」にも大胆なアレンジが施されている。山中はこの曲も合唱をやらされたことがあるそうだ。
「なんてヒドイ『ミッシェル』なの!」
授業でのアレンジに山中はがっかりした。そこで、山中版は思い切りアヴァンギャルドな「ミッシェル」にトライしている。
「イエスタデイ」は街のスーパーやテレビ番組のBGMで耳にするインストゥルメンタルのアレンジが気に食わなかった。
「『ミッシェル』も、『イエスタデイ』も、ビートルズ以外の演奏ではほとんど魅力を感じたことがありません。それならば、私が大胆に手を入れた演奏しようと思いました」
「イエスタデイ」でもタブラをフィーチャー。リズミカルな曲にしてしまった。
この曲で、山中はピアノだけでなく、インドの弦楽器、シタールも演奏している。
「誰もが知る名曲をいかに私流にフェイクするか、をテーマに演奏しました」
一方、オリジナルの香りを生かしたアレンジになっているのが「ハニー・パイ」や「ユア・マザー・シュッド・ノウ」だ。
「『ハニー・パイ』の主旋律は鍵盤ハーモニカで雰囲気をだしました」
その鍵盤ハーモニカの演奏も山中自身。楽しそうだ。
「ユア・マザー・シュッド・ノウ」は、ビートルズのテレビ映画『マジカル・ミステリー・ツアー』のイメージを大切にした。
「物語の後半で、真っ白なスーツの胸に赤いバラを刺したビートルズ4人が歌いながら階段を下りてくるシーンが大好きなんです。今回カヴァーして、自分の作曲・編曲でいかにビートルズの影響を受けているかを再確認しました」
とにかく、ビートルズの曲を徹底的に自分好みに再生したのが、山中の『ビコーズ』なのだ。ピアノだけではなく、シタールを演奏したり、鍵盤ハーモニカを演奏したり。何かしたいものを見つけると、山中はやめられなくなるのだという。
それには理由があった。
『ビコーズ』 2012.07.18発売
【左】初回限定盤 SHM-CD(+DVD) 3,500円(税込)UCCJ-9126
【中央】初回限定盤 SA-CD ~SHM仕様~ 4,500円(税込) UCGJ-9004
【右】通常版 SHM-CD 3,059円(税込) UCCJ-2102
http://www.universal-music.co.jp/chihiro-yamanaka/
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出演:山中千尋
福島県生まれ、群馬県育ち。ジャズ・ピアニストで作曲家でアレンジャーでプロデューサー。米ボストンのバークリー音楽大学を首席で卒業し、アルバム『リヴィング・ウィズアウト・フライデイ』でデビュー。『アピス』『レミニセンス』などのアルバムを発表。7月18日に、「イエスタデイ」「ミッシェル」「ユア・マザー・シュッド・ノウ」などビートルズのカヴァーにオリジナルの「インサイト・フォーサイト」「イット・ワズ・ア・ビューティフル・ミニット・オブ・マイ・ライフ」を加えた10曲(通常盤/SACD~SHM仕様~盤はボーナストラック入りで11曲)を収録した『ビコーズ』をリリース(ユニバーサル ミュージック)。7月28日(金)に神奈川県の葉山マリーナで開催される「真夏の夜のJAZZ」に出演。9月7日からはジャパン・ツアーがスタート。
山中千尋 オフィシャルサイト http://www.chihiroyamanaka.com/
山中千尋 公式twitter https://twitter.com/#!/ChihiroYamanaka
真夏の夜のJAZZ in HAYAMA 2012 http://microsites.universal-music.co.jp/event/jazz2012/ -
取材・文:神舘和典
1962年東京都出身。音楽を中心に書籍や雑誌のコラムを執筆。ミュージシャンのインタビューは年間約70本。コンサート取材は年間約80本。1998年~2000年はニューヨークを拠点にその当時生きていたジャズミュージシャンのほとんどにインタビューを行った。『ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。
新潮新書 http://www.shinchosha.co.jp/writer/1456/
幻冬舎新書 http://www.gentosha.co.jp/book/b4920.html
撮影:萩庭桂太