そんな山中が今夢中になっているのは、消防車だという。

「もともと重機類が好きなんです。働く自動車にものすごく魅力を感じます。その中でも消防車は特別。人の命を救うクルマですから」

 近所で火事があると、不謹慎だと自覚しつつも、消防車見たさに駆けつけてしまう。

「消防車の写真を撮ろうとして、消防士にひどく叱られたこともあります」

 子どもを対象とした消防車フェアも観に行く。運転席に1度乗せてもらっただけではがまんできず、もう1度乗りたいとスタッフにネゴシエーションして、変人扱いされたことも。

「それでも、乗りましたけどね」

 消防車好きが高じて、やがて消防署の近くに引っ越した。

 絶対音感を持つ山中は、初動のエンジン音を聴くだけで、その消防車の型から火事の大きさまで判断できるそうだ。

「ある外国車メーカーのイベントでピアノを弾いたら、打ち上げの席に、消防車では国内で圧倒的なシェアを誇るモリタホールディングス社長のお嬢様がいらしたんです。私、ものすごく感激して、ご挨拶したら、兵庫県にある工場に招待してくれました」

 工場では、操作をやらせてもらった。

「消防車の操作はとてもシンプルです。素人の私にもできるくらい。緊急時のための自動車だから、操作を複雑にしてはいけないのでしょうね。構造がシンプルなのは、ピアノと似ています。でも、人の命を救える消防車のほうが立派です」

『ビコーズ』 2012.07.18発売

【左】初回限定盤 SHM-CD(+DVD) 3,500円(税込)UCCJ-9126
【中央】初回限定盤 SA-CD ~SHM仕様~ 4,500円(税込) UCGJ-9004
【右】通常版 SHM-CD 3,059円(税込) UCCJ-2102
http://www.universal-music.co.jp/chihiro-yamanaka/

  • 出演:山中千尋

    福島県生まれ、群馬県育ち。ジャズ・ピアニストで作曲家でアレンジャーでプロデューサー。米ボストンのバークリー音楽大学を首席で卒業し、アルバム『リヴィング・ウィズアウト・フライデイ』でデビュー。『アピス』『レミニセンス』などのアルバムを発表。7月18日に、「イエスタデイ」「ミッシェル」「ユア・マザー・シュッド・ノウ」などビートルズのカヴァーにオリジナルの「インサイト・フォーサイト」「イット・ワズ・ア・ビューティフル・ミニット・オブ・マイ・ライフ」を加えた10曲(通常盤/SACD~SHM仕様~盤はボーナストラック入りで11曲)を収録した『ビコーズ』をリリース(ユニバーサル ミュージック)。7月28日(金)に神奈川県の葉山マリーナで開催される「真夏の夜のJAZZ」に出演。9月7日からはジャパン・ツアーがスタート。

    山中千尋 オフィシャルサイト http://www.chihiroyamanaka.com/
    山中千尋 公式twitter https://twitter.com/#!/ChihiroYamanaka
    真夏の夜のJAZZ in HAYAMA 2012 http://microsites.universal-music.co.jp/event/jazz2012/

  • 取材・文:神舘和典

    1962年東京都出身。音楽を中心に書籍や雑誌のコラムを執筆。ミュージシャンのインタビューは年間約70本。コンサート取材は年間約80本。1998年~2000年はニューヨークを拠点にその当時生きていたジャズミュージシャンのほとんどにインタビューを行った。『ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。

    新潮新書 http://www.shinchosha.co.jp/writer/1456/
    幻冬舎新書 http://www.gentosha.co.jp/book/b4920.html

撮影:萩庭桂太