女が抱く「私は原石」幻想
伊藤ニーナ
- Magazine ID: 1092
- Posted: 2012.07.06
伊藤ニーナをモデルとして選んだ雑誌「GINGER」の平山由紀子副編集長に、彼女のもつ魅力を聞いてみた。
「選考するとき、プロとしてすでに活動している人も嫌だし、読モをがっつりやっている人も嫌だな、と思いました。ニーナは年齢的に一番若かったけど、体に恵まれているし、服を着られる子。何よりも成長しそうだと思いました」
オーディションの受け答えを聴いていて、平山さんはますます彼女を気に入った。
「想定外のポーズをとらせても、ニーナは頬を赤らめながらも思いきりよくやるし、絵になっていたんです。そういう大胆さも女性受けしそうだった。母親のことを誇らしげに語る様子にも、仲のいい家族のなかで育ってきたんだろうな、というのがにじみ出ていました」
編集部は新人の彼女に、どんどんプロ中のプロのスタッフを出会わせていった。
「そこでなんとか受けて立とうとする粘り強さを感じました。物怖じしないし、先輩モデルたちの常識にもすーっと入っていきましたね」
平山さんは公募の印象をこんなふうに語る。
「応募者の98%は残念ながら落選。1%は上級読者モデル。残りの1%だけが選考に進める人たちでした」
ほとんどの女の子たちが「モデルになったら誰かに磨いてもらえそう」と思っているというのである。名付けて「原石幻想」とでも言おうか。
「たいていの女性には『今の私はまだ本当じゃない。まだ何かになれるはず』というのがあるのかもしれません。一生自分のスタイルと存在意義を探し続けているんですよね。それがエコ活動とか、ビジネスとかスピリチュアルとか、結婚や出産とか、まあいろいろあるわけです。読モになる、というのもそのなかのてっとり早い一つなのかもしれませんね。服を着るモチベーションがあがるということはいいことだとは思いますが。しかしプロのモデルになるというのは、また話が違うんですよね」
プロのモデルとして自分を打ち出していくには「誰かに磨いてもらえそう」ではなく自分で意志をもって「誰かに磨かせる」必要がある。そして自分で自分自身を磨かなくてはならない。
それはなんのプロでも同じことだと思う。
転がっている「原石」は「原石」だと知られなければ土の中に埋もれたまんまだ。伊藤ニーナという原石は、磨かれ始めた輝きを少しずつ増していくだろう。
いつかダイヤモンドになった彼女に会いにいきたい。
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出演:伊藤ニーナ
1992年福岡県生まれ。2011年に「GINGERスターオーディション モデル部門」でグランプリを受賞。専属モデルとして活躍中。T168 B81 W58 H88 (株)テンカラット所属。
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取材・文:森 綾
1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
撮影:萩庭桂太