伊藤ニーナをモデルとして選んだ雑誌「GINGER」の平山由紀子副編集長に、彼女のもつ魅力を聞いてみた。

「選考するとき、プロとしてすでに活動している人も嫌だし、読モをがっつりやっている人も嫌だな、と思いました。ニーナは年齢的に一番若かったけど、体に恵まれているし、服を着られる子。何よりも成長しそうだと思いました」

 オーディションの受け答えを聴いていて、平山さんはますます彼女を気に入った。

「想定外のポーズをとらせても、ニーナは頬を赤らめながらも思いきりよくやるし、絵になっていたんです。そういう大胆さも女性受けしそうだった。母親のことを誇らしげに語る様子にも、仲のいい家族のなかで育ってきたんだろうな、というのがにじみ出ていました」

 編集部は新人の彼女に、どんどんプロ中のプロのスタッフを出会わせていった。

「そこでなんとか受けて立とうとする粘り強さを感じました。物怖じしないし、先輩モデルたちの常識にもすーっと入っていきましたね」

 平山さんは公募の印象をこんなふうに語る。

「応募者の98%は残念ながら落選。1%は上級読者モデル。残りの1%だけが選考に進める人たちでした」

 ほとんどの女の子たちが「モデルになったら誰かに磨いてもらえそう」と思っているというのである。名付けて「原石幻想」とでも言おうか。

「たいていの女性には『今の私はまだ本当じゃない。まだ何かになれるはず』というのがあるのかもしれません。一生自分のスタイルと存在意義を探し続けているんですよね。それがエコ活動とか、ビジネスとかスピリチュアルとか、結婚や出産とか、まあいろいろあるわけです。読モになる、というのもそのなかのてっとり早い一つなのかもしれませんね。服を着るモチベーションがあがるということはいいことだとは思いますが。しかしプロのモデルになるというのは、また話が違うんですよね」

 プロのモデルとして自分を打ち出していくには「誰かに磨いてもらえそう」ではなく自分で意志をもって「誰かに磨かせる」必要がある。そして自分で自分自身を磨かなくてはならない。

 それはなんのプロでも同じことだと思う。

 転がっている「原石」は「原石」だと知られなければ土の中に埋もれたまんまだ。伊藤ニーナという原石は、磨かれ始めた輝きを少しずつ増していくだろう。

 いつかダイヤモンドになった彼女に会いにいきたい。

  • 出演:伊藤ニーナ

    1992年福岡県生まれ。2011年に「GINGERスターオーディション モデル部門」でグランプリを受賞。専属モデルとして活躍中。T168 B81 W58 H88 (株)テンカラット所属。

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太