私は萩庭桂太になぜその最終審査で「あなたたちはきっと読者モデル止まりだから」なんて言ったのか、と質問した。

「何千人もの中から最終審査に残った6人だから、すでにちょっと天狗になってるな、っていう感じがしたんだよ。でもぼくらの目から見たら、全員素人の何千人からの6人。つまり、草野球で地域で1番になりました、っていう程度なんだよね。でも、本当のプロが集まる場所は甲子園みたいなもの。右も左も自分より可愛くて洗練されている。その最終審査の気持ちでこれから甲子園に出て行ったら、気持ちだけで負けちゃって、簡単に田舎に帰っちゃうんだよ。自分がきれいに撮られたいとか、可愛くしてもらいたいとかじゃ絶対に残れない。私を通して何かを表現する、というふうにならないと」

 なるほど、たまにはいいことを言うな。私にはいつもスネ夫に見える萩庭桂太が、この日は『アタックNO.1』の猪熊コーチに見えたのだった(猪熊コーチの指導ポリシーは(1)ほめない (2)バレーに愛情はいらない (3)去る者は追わず、である)。

 伊藤ニーナは、プロのモデルになりたいのだと言う。

「読モと、プロのモデル。言葉の響きも違うし、どうせやるならちゃんとモデルと呼ばれたい。中途半端は嫌なんです。読モにも素敵な方はたくさんいると思うけど、世間では『読モでしょ?』と言われたりもしますよね。今は高熱が出ても、事務所から『代わりがいないんだから行って』と言われます。そのお仕事のためにスタッフやいろんな方が集まってくださっているわけだし、休んだら迷惑がかかりますから」

 たったの1年で、基本的なプロ意識を身につけたニーナ。どんどん欲も出てきたようだ。

  • 出演:伊藤ニーナ

    1992年福岡県生まれ。2011年に「GINGERスターオーディション モデル部門」でグランプリを受賞。専属モデルとして活躍中。T168 B81 W58 H88 (株)テンカラット所属。

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太