雑誌『GINGER』が「モデルになりたい人」「女優になりたい人」「作家になりたい人」などと部門別に呼びかけた大オーディションを行ったのは、一昨年の秋のことだった。

 なんとモデル部門は他の部門を圧倒的に上回る応募総数で、5887通。

 そのオーディションの最終審査には6人が残った。ニーナはそのうちの1人だった。

「最終で『どうしてモデルになりたいのか』と聞かれて、何を答えたか忘れちゃったけど、いきなり萩庭さんに『あなたたちはきっと読者モデル止まりだから』と言われたんです」

「うわ、ひどいこと言うねえ」と私が思わずつぶやくと、萩庭桂太は目をそらしながら「わかってねえな」という顔をした。私ならマイクを投げつけて帰ってしまったと思うが、ニーナはそこで笑顔をつくったという。

「悔しい! と思ったけど、何も知らないから、言い返せないし、今のまま行けばそういう感じなのかなあという妙に納得したところもありました。その後の撮影で、ちゃんと心から笑った顔を撮ってくださったり、萩庭さんの写真は好きなんですけど」

 萩庭桂太は「写真は、って言うな」と怒っていたが、ニーナはまた笑顔であった。

 この子、大物だわ、と私は妙に楽しくなってきた。

  • 出演:伊藤ニーナ

    1992年福岡県生まれ。2011年に「GINGERスターオーディション モデル部門」でグランプリを受賞。専属モデルとして活躍中。T168 B81 W58 H88 (株)テンカラット所属。

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太