今週は保護犬の話がメインになっているのであるが、最後にメインモデルをしてくれたRINAと愛犬BOBBYのことも記しておきたい。

 RINAはブラジル生まれ。母親がブラジル人だ。11歳から3年間日本に滞在し、その後ブラジルに戻って、17歳でまた日本にやって来た。それから12年、モデルとして活躍している。

 イヌ好きは母親譲り。

「生まれたときから家にはイヌがいました。ラブラドールとミニチュア・ピンシャー。2匹ともまだ2~3歳のときに母親が拾ってきたんです。ピンシャーは19歳まで生きました。お父さんの仕事で日本に来るときにラブラドールは親戚に預けました。小さいときから思い入れもあるからつらかった。もうペットはいらない、と思ったくらい。一人で飼う自信もないし、責任ももてないし」

 本当のイヌ好きらしい。考えて考えて。08年12月に結婚するとき、ご主人がBOBBYを飼おうと言った。

「1日のスタートがBOBBYとの散歩になりました」

 モデルの仕事は朝5時集合などということもある。それでも暗いうちから起きて散歩した。BOBBYはわんぱくで、いたずらもいっぱいした。

「それで旦那さんがシーザー・ミランのDVDを買ってきたんです。そこには飼い主である自分自身がちゃんとしていること。精神的なバランスがとれていないとイヌはそれを感じて行動するから、弱いとダメ。人間がリーダーになれば、どんなイヌでも人間と問題なく暮らせるとあったんです」

 新婚生活がはじまって間もない頃、ご主人の病気が発覚した。助からない病名だった。

「その頃もBOBBYがいてくれたから、彼を家に残して仕事に行くこともできました」

 ご主人は2010年の5月に他界。その日、一人残された彼女はベッドに入っても眠れず、ゆるい睡眠薬を口にして眠った。翌朝、目が覚めると、一人のはずのベッドが温かかった。

「枕にね、まるで旦那さんがいるかのように、BOBBYの頭があったんです。私、気がついたらイヌを腕枕してたんですよ。いつもはそんなことしたことなかったのに。びっくりしました。ああ、私、一人じゃないんだ、あなたがいるね、と。がんばるよって」

 しかしご主人を亡くして、そのことを人にも言えず日々仕事に追われる生活の中、彼女の心は犬のBOBBYに伝わり、BOBBYもその不安定から攻撃性を見せるようになっていった。そして再びご主人が残したシーザー・ミランのDVDで復習するうち、自分を変えよう。そうすればイヌもリラックスできるんだ。と心から気づき、穏やかなBOBBYとの生活を取り戻したという。

 イヌは人間を正す存在だ、と実感したという。

「それをたくさんの人にわかってほしいんです」。

 イヌというのは不思議な生き物だと思う。

 萩庭桂太は「イヌはイヌという動物。あとの動物は普通の動物」だと言っていた。彼が写真より好きなイヌを撮った今回の写真は、だからたぶん「作品」でも「商品」でもない。

 たまにはいいのではないか、と思う。プロのカメラマンが撮る「思い出」があっても。

(取材・文:森 綾)

  • 出演:RINA

    ブラジル生まれ。イタリア系ブラジル人の母親と日本人の父親の間に生まれる。身長172センチで股下90センチというプロポーションをもち、多くの女性ファッション誌やCMでモデルとして活躍中。
    http://www.rinafujita.com/

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクション『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)など多数。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太