「で、萩庭さんはいつから写真を撮り始めたんですか」

 私は目の前の寿司を忘れたくて聞いた。

「小学生の頃に、イヌが大好きで、飼いたくてさ。でもうちは社宅に住んでたから飼えなかったんだよ。それで近所のイヌを散歩させてもらったり、犬小屋に潜り込んだりしてたんだけど、ある日、伯父がカメラをうちに置いていったの。それでイヌを撮り始めたんだ。写真に撮るとさ、なんか自分のものになったような気がしてさ」

 萩庭桂太はその後、父親の転勤で富山に引っ越し、再度東京に戻ってくるとき、友達の写真を撮って、そこに並ぶ顔にまた心和ませるという経験をしたという。しかし、どちらもきわめて普通の話である。プロになる糸口が見えない。

「ほんとにイヌが好きでさ。写真よりイヌのほうが絶対に好きなんだよ」

「へえ。じゃあなんで、今、イヌを飼ってないんですか」

「ほんとに好きだから。本気で考え過ぎるから飼えないんだよ」

 意味がわかるような、わからないような。

 今回の撮影はその萩庭桂太が大好きなイヌと、モデルのRINAの物語だという。

 RINAは女性ファッション誌ではとても人気のあるモデルだ。自分のプライベートなファッションコーディネートを見せることのできる、センスのあるモデルの一人でもある。

「RINAの事務所の社長さんが保護犬を引き取って3匹育てているんだって。その話も聞きたいんだよね」

 萩庭桂太は「イヌだからな、気をつかうな~」といつにない緊張ぶりを見せていた。

 「写真よりイヌが好き」というフォトグラファーと私は、五月晴れのある日、RINAとイヌたちに会いに行くことになったのだった。

(取材・文:森 綾)

  • 出演:RINA

    ブラジル生まれ。イタリア系ブラジル人の母親と日本人の父親の間に生まれる。身長172センチで股下90センチというプロポーションをもち、多くの女性ファッション誌やCMでモデルとして活躍中。
    http://www.rinafujita.com/

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクション『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)など多数。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太