「なんかやっぱり無理でした」と、捨てる人たち
RINA
- Magazine ID: 1037
- Posted: 2012.05.16
今、至るところにペットショップがある。その産業、2兆円とも言われ、巨大なお金が動いている。
「一部のブリーダーたちは引き取り手のないイヌを捨てたり、5~7歳になって産めなくなったイヌを捨てたりすることがあります。あるいはペットショップで売れ残ったイヌたちも捨てられます。ペットが欲しいからと飼ったものの『やっぱりなつかないから無理でした』『新しいイヌを飼ったから前のこいつはいらないんで』と、動物愛護管理センターに連れていく人もいます。そこは“保健所”と呼ばれていますが、実際は“殺処分所”のことです。名前と中身とはえらく違うんですよ」
鈴木さんはもはやそんな説明をしても顔を曇らせたりしない。自分たちがやるべきことが明解で、やろうという意志が揺るぎないからだろう。
「なんとか日本を殺処分ゼロの国にしたい。国はなかなか重い腰を上げませんから、そういう自治体をひとつずつ増やすしかないと思います。たとえば2年前に熊本市は殺処分ゼロを実現しています。ひとつの実例をつくって、それを一斉に広報するのはとてもいい方法だと思う。次に可能性があるのは沖縄県です。島だから、隣県から捨てにくるということもない。今、沖縄は殺処分頭数が日本一なんだけど、だからこそゼロにできる、変われるというお手本を日本中に見せてもらえたら」
たとえばドイツにはイヌ税があり、各都市の自治体によって内容は異なるが、その地区のイヌの数のコントロールや、安易にイヌを飼わないというハードルにもなっているという。日本にもそんな仕組みができてもいい。
一匹でも救いたい。だから鈴木さんはそこに住み込んででも頑張っている。
保護したイヌの数は常時8~13頭。今週の掲載分で、火曜、水曜の写真のイヌたちは皆、飼い主を待っているイヌたちだ。
「飼いたいと言ってくださる方には1時間くらい面接させていただき、数日間トライアルをしてもらって、譲渡します。単純に一人暮らしだからダメだとかいうことじゃなく、人柄を拝見したいんです。飼い主もイヌも幸せになれるかどうか、その家庭のライフスタイルと合うかどうかも大切ですし。なぜそこまで神経質になるのかというと、ファミリーのふりをしてやってきて、イヌを実験用に売りさばく人がいたからです。うちのシェルターはご寄付が少ないので譲渡費を安く抑えられませんが、安いから欲しい、という人はいろいろな意味で注意が必要だと思っています」
譲渡されたものの家庭の事情が変わり「飼えなくなった」と戻ってきたり、時間をかけてケアする必要があるイヌはトライアル中止になってしまうこともあるらしい。
「先ずは心のケアを優先し、たくさんの愛情で人との信頼関係を作りながら、ゆっくりトレーニングしていき、譲渡につなげていっていますが、ご家庭でのケアが難しい子については、シェルターで生涯ケアをすることも想定しています」
鈴木さんの話はあてどなく大変なことのような気がする。生き物の命に対しての考え方が啓蒙されなければ、事態は変わらない。子どもたちに教える、では間に合わないような気もする。まず大人から、考えるべきなのだ。
(取材・文:森 綾)
-
出演:RINA
ブラジル生まれ。イタリア系ブラジル人の母親と日本人の父親の間に生まれる。身長172センチで股下90センチというプロポーションをもち、多くの女性ファッション誌やCMでモデルとして活躍中。
http://www.rinafujita.com/ -
取材・文:森 綾
1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクション『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)など多数。
http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
撮影協力&里親お問い合わせ:わんずぺ~す http://www.wanspace.jp/
撮影:萩庭桂太