藤原道山とSINSKE。こうして話を聴いてみると、どこか芯のところで共通点を感じずにはいられない。最後にお互いへの注文を聴いた。

 まず道山からSINSKEへ。

「あまり注文はないんですが、コンサートで話しだすと止まらなくなる事が……(笑)。最初の頃は本当にハラハラしました。『そろそろ次の曲を』と3回は言っていたかな。最近は1回くらいになりましたが。だいぶこちらの空気を察してくれるようになりました(笑)」

 ではSINSKEから道山へ。

「人間的に出来過ぎです(笑)。何事にもきっちりと手抜かりがなく、礼に篤い。一番困るのは完璧過ぎるおデザをもってくること。スウィーツ王子ですからねえ」

 しかし、互いにこうも言う。

「SINSKEさんと組むのは、人としてアクティブで素敵だから。違う形でお互いの個性を出し合える。対照的だからこそ成立するんだと思うし、ストレスはまったくないです。人と組んで音楽を奏でるというのは、その人に触れるということなんです」

「道山さんは音楽でもプライベートでも尊敬すべき人。彼の舞台での佇まいの美しさを見習ってきました。去年、Twitterで『二人のお辞儀が美しかった』とほめてくれたファンの人がいて、ぼくも少しは近づけたかなとうれしかったです」

 ピアノなら両手で10音出せるものを、尺八は1音しか出せない。マリンバはマレットを両手で最大6本、つまり6音までだ。

 1+6の音色が、オーケストラになる。

 単なる「イケメン」ではなく音楽家としての二人を是非、確かめていただきたい。

「藤原道山&SINSKE『ボレロ』2012」のツアーは、5月6日の長野を皮切りに7月31日の札幌まで続く。

(取材・文:森 綾)

  • 出演:藤原道山&SINSKE

    尺八の新たな魅力を拓く若き第一人者として邦楽のみならず幅広いジャンルで活躍中の藤原道山(ふじわらどうざん)。ヨーロッパで研鑽を積み数多くの受賞歴をもつマリンバ奏者SINSKE(シンスケ)。二人による 尺八とマリンバのユニットは、まるでオーケストラのように多彩。ラヴェル作曲「ボレロ」など「世界最小編成オーケストラ」の愛称で各地のコンサートやイベントで非常に高い評価を得ている。それぞれのソロも交え、邦楽、クラシック、オリジナル作品という幅広いレパートリーで構成する初の全国ツアーが、5月6日の長野(松本)を皮切りにスタートしている。
    http://www.dozan-sinske.com/
    http://www.youtube.com/watch?v=PMxNKVFDy0c

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクション『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)など多数。映画『音楽人』(主演・桐谷美玲、佐野和眞)の原作となったケータイ小説『音楽人1988』も執筆するほか、現在ヒット中の『ボーダーを着る女は95%モテない』(著者ゲッターズ飯田、マガジンハウス)など構成した有名人本の発売部数は累計100万部以上。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太