レコーディングスタジオでの撮影が終わった、とある週末。

 萩庭桂太と私は杉並区永福町のsonoriumというコンサートホールに着いた。ここでSINSKEがヴァイオリン奏者とのコンサートを開くことになっていたからだ。

 しぶしぶ今回の撮影を始めた萩庭であるが、撮り始めるといろいろと撮りたいと言い始めた。根は真面目で本当に撮影することが好きな真摯なカメラマンなのである。

 さて、本邦初公開、楽器が運び込まれる様子から見せていただく。

「へー、こんなにばらんばらんになっちゃうんですかー」

「意外とコンパクトでしょう」

 お弟子さんとマネージャーで、あっという間に組み立ても完了する。スタンドの下に共鳴管が並び、その上に木の鍵盤が並ぶ。

 SINSKEさんは楽器のなりたちについても教えてくれた。

「もともと起源はアフリカの民族楽器でね。言葉がない時代の連絡用の道具だったようなんです。狩りに出ていった人たちと交信するために鳴らしあったりしたのでしょう。そこから言葉は言葉として発達し、この道具は楽器として音程差がつき、鍵盤の数が増えていった。アフリカでは今も共鳴管がひょうたんになっているマリンバがありますよ。バラフォンといって、豊作の祈りに奏でる木琴もあります」

 原始的で素朴な音色を残しつつ、こんな洗練された形になったのは100年ほど前なんだという。

 Sonoriumという真っ白なチャペルのようなホールで奏でられるマリンバの音色は深くおなかの底にまで届くようなあたたかさがあった。

(取材・文:森 綾)

  • 出演:藤原道山&SINSKE

    尺八の新たな魅力を拓く若き第一人者として邦楽のみならず幅広いジャンルで活躍中の藤原道山(ふじわらどうざん)。ヨーロッパで研鑽を積み数多くの受賞歴をもつマリンバ奏者SINSKE(シンスケ)。二人による 尺八とマリンバのユニットは、まるでオーケストラのように多彩。ラヴェル作曲「ボレロ」など「世界最小編成オーケストラ」の愛称で各地のコンサートやイベントで非常に高い評価を得ている。それぞれのソロも交え、邦楽、クラシック、オリジナル作品という幅広いレパートリーで構成する初の全国ツアーが、5月6日の長野(松本)を皮切りにスタートしている。
    http://www.dozan-sinske.com/
    http://www.youtube.com/watch?v=PMxNKVFDy0c

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクション『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)など多数。映画『音楽人』(主演・桐谷美玲、佐野和眞)の原作となったケータイ小説『音楽人1988』も執筆するほか、現在ヒット中の『ボーダーを着る女は95%モテない』(著者ゲッターズ飯田、マガジンハウス)など構成した有名人本の発売部数は累計100万部以上。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影協力:sonorium http://www.sonorium.jp/
撮影:萩庭桂太