『ボレロ』をきっかけに、二人のユニットはどんどん成長していった。今度はSINSKEに話を聴こう。

「お陰様で口コミなのか『ボレロ、来年は聴きにいきますね』などと言ってくださる方が徐々に増えていったんです。『二人のCDがほしい』ともよく言われるようになり、今年初めてレコーディングすることになったんですよ」

 二人で演奏する面白さは道山の感じるところと近しいようだ。

「学んだ環境は違うけれど、正統的な古典を素直に勉強しつつ、ジャズやポップスも吸収してきたところが似ているのでしょうね。だからかどうか、演奏空間を共有していくときに、求める間合い、音、がまったく同じではないけれど、近い感覚があるんです。それは音楽以外でも、たとえば打ち上げでどこに行って何を飲み食べたいかというような趣向もそうなんです。音楽とプライベートの感覚が、両方とも近い人ってなかなかいないものなんです」

 なるほど和楽器と洋楽器という対称すら、陰陽のようにわかちがたいもののように思えてくる。

 唯一、趣向が似過ぎてぶつかるものがあった。

「衣装、が問題なんです。二人ともピカピカ好きでね。『そのピカピカいいね。どこでつくったの』『次、どれくらいピカるの?』と、ピカピカ合戦になってしまうんです」

 ピカピカ合戦が最後は美川憲一と、いや小林幸子までいくかどうか。それもまた楽しみである。

(取材・文:森 綾)

  • 出演:藤原道山&SINSKE

    尺八の新たな魅力を拓く若き第一人者として邦楽のみならず幅広いジャンルで活躍中の藤原道山(ふじわらどうざん)。ヨーロッパで研鑽を積み数多くの受賞歴をもつマリンバ奏者SINSKE(シンスケ)。二人による 尺八とマリンバのユニットは、まるでオーケストラのように多彩。ラヴェル作曲「ボレロ」など「世界最小編成オーケストラ」の愛称で各地のコンサートやイベントで非常に高い評価を得ている。それぞれのソロも交え、邦楽、クラシック、オリジナル作品という幅広いレパートリーで構成する初の全国ツアーが、5月6日の長野(松本)を皮切りにスタートしている。
    http://www.dozan-sinske.com/
    http://www.youtube.com/watch?v=PMxNKVFDy0c

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクション『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)など多数。映画『音楽人』(主演・桐谷美玲、佐野和眞)の原作となったケータイ小説『音楽人1988』も執筆するほか、現在ヒット中の『ボーダーを着る女は95%モテない』(著者ゲッターズ飯田、マガジンハウス)など構成した有名人本の発売部数は累計100万部以上。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太