撮影は都内の下町の廃屋などをロケ地として進められた。なにしろ、テーマが「ジャンヌ・ダルク」である。Renjiさんが用意した服はマニッシュで鋭いシルエット。ヘアスタイルは兜のように逆毛を立てて結い上げられた。メイクも太いアイラインで、強い意志を表現する。

 萩庭桂太はどう撮ろうと思ったか。

「全部を強い写真にばっかりしないで、等身大のビビアンも見え隠れするようにと思った」

 当のビビアン・クオはそこにどんな思いで立ったのだろうか。

「私は写真を撮るのが好きなので、もしも私が撮るほうだったら、そのモデルにどうさせたいか、と考えます」

 その言葉を聴いて、萩庭はまたうーんと考えた。

「彼女はすごく客観的に自分を見てる。自分を使って一枚の絵を作ってるんだろうね。若くてモデルになりたいコにはそういう人は案外少ないかもしれない。モデルになりたいコ、ってただきれいに見せようとがんばっちゃう」

 確かに出来上がった写真は一枚の絵のようだ。

 なぜビビアンにはそんなことができるのか?

「ニューヨークでパーソンズという美術大学に通っていました。毎日油絵を描いていて、構図や余白のバランスをいつも考えていましたから」

 なるほど。ちょっと意地悪な質問をしてみましょう。そこまでわかってしまったら「あれ? このカメラマンは違うな」と思うことってないですか。

 ビビアンは不敵に微笑んだ。

「違う、と思うこともありますよ。でも私が持ってる美学が常に正しいとは限らない。文化的価値観はそれぞれ違うから。自分の美学にこだわり過ぎたら、自分が成長しないと思います」

 確固とした答えが返ってきた。やっぱりあなた、ジャンヌ・ダルクっぽいよ。

「いいえ。自分とかけ離れた役。でもそのほうが簡単です。かっこよく撮ってもらいました」

 じゃ、ほんとのビビアンはどんな人なんだろう? それはまた明日。

(取材・文:森 綾)

Jacket&Pants&Shoes:THOMAS WYLDE/M inc
Shirts:Botan Ave.
Gloves:Flea Store/フリーカンパニー
Collar&Ribbon:文化屋雑貨店
Earring:SHUN OKUBO/Botan Ave.

  • 出演:ビビアン・クオ

    1988年9月29日台湾生まれ。H169 B81 W60 H89。モデルとしては「In Red」などの日本の雑誌のほか、「FUNSWANT」など台湾の雑誌でも活躍。CFはNOTTV、JR東日本はさぶさ、SONY PS vita、ユニクロ、東芝25th anniversary Notebook(アジア盤)などに出演。
    Model Agency Friday http://www.fridayfarm.net

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクション『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)など多数。
    映画『音楽人』(主演・桐谷美玲、佐野和眞)の原作となったケータイ小説『音楽人1988』も執筆するほか、現在ヒット中の『ボーダーを着る女は95%モテない』(著者ゲッターズ飯田、マガジンハウス)など構成した有名人本の発売部数は累計100万部以上。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

  • ヘア:Koji Ichikawa

    http://www.kojiichikawa.com
    SEPT(office) http://www.office-sept.com

  • メイク:Sakamoto Yoshiko (坂本よし子)

    http://www.akamg.com/sakamotoyoshiko.html
    A.K.A(office) http://www.akamg.com

衣装協力:
M inc http://www.mincnim.com
Botan Ave. http://www.suzy-m.co.jp/?page_id=3700
文化屋雑貨店 http://www.bunkaya.co.jp
フリーカンパニー TEL 03-3401-7427

撮影:萩庭桂太