ここ数年、演劇の世界でめきめきと頭角を現してきたのが、柿澤勇人。劇団四季出身で、退団後も、『メリーポピンズ』や『ジキル&ハイド』など人気ミュージカルの常連だったけれど、最近はそれ以外の活躍がめざましい。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では源実朝を演じ、その脚本を書いた三谷幸喜の舞台『オデッサ』の主役、さらには宮藤官九郎脚本の『不適切にもほどがある!』にも出演。ストレートプレイでも重要な役を次々と演じ、存在感を増している。

柿澤 いや、でも、まだまだ自分の目指していることは、十分にできていない。僕が劇団四季を退団したのは、芝居をやりたかったから、なんです。でもミュージカルへの出演が続いて。もちろん、ミュージカルは好きです。僕が本当に目指していることができるようになったのは、たぶんここ1~2年じゃないかな。

 どうしてミュージカル以外にこだわるの?

柿澤 得意な分野以外でも戦っていけるようにならないと、たぶん芸能界で生き残れないなと(笑)。

 しかも、彼自身が目指しているのは……。

柿澤 堅苦しいのは苦手なんです。かしこまって、タキシードを着て歌いあげるようなコンサートは、こそばゆい。だからカキンツハルカみたいな、好きな人たちと好きな音楽をやれる場があるのは、僕にとってすごくうれしいこと。やりたい道がひとつ増えた、という感じです。

 そんな彼が昨年のカキンツハルカのステージで、印象に残っていることがひとつ、ある。

柿澤 ウエンツがWaTの『僕のキモチ』を歌ったとき、客席からキャー!って歓声があがって、号泣している人もいて、客席の反応がすごかったんです。ウエンツが今、WaTの曲を歌うのはすごくレアなことだと思うし、ウエンツ自身、ずっと歌ってこなかったというのもある。しかも客席と舞台の距離がすごく近かったよね。音楽ってすごいなって感動したし、ショービズのすごさを実感したし、ファンの皆さんとこういう交流の仕方もあるんだなって思った。そして何よりファンから愛されるって、こういうことなのかって。なにかすごく、新鮮な体験だったんですよ。

 自分らしくいられるステージで、柿澤勇人はどんな曲をどんな風に歌うのか。聴きたくなってきませんか?