自分のことを語るとき、酒と料理の話は外せない、と安田カナは言う。
「私がお酒を飲み始める頃に、父がぼそっと、言ったんです。『カナ、お酒は楽しいときに、楽しい気分のときに飲みなさい。なにかイヤなことがあってヤケ酒なんて、絶対にしちゃダメだ。これはパパとの約束だよ』って。ふだん寡黙で滅多に口をきかない人なんですけど、ね。あとひとつ、私は父の真似をして、ワイルドターキーのロックから飲み始めたんですけど、父は『これはとても強いお酒だから、強いお酒を飲むときは、必ず薄い酒と一緒に飲みなさい、そうすれば悪酔いしないから。パパはバドワイザーがあればそれをチェイサーにしていつも飲んでいるよ』って」
 なんか、すごい酒豪父娘の会話だ。
「それを信じて、私はいつもそうやって飲んでいたんです。これで私は酔わないんだって自信があって。でもそれはただ、私がお酒に強かっただけで、そんなの信じられないって友達に言われました(笑)」
 だから今も、飲むときはいつも、誰かと一緒。家で手料理を作って、ホームパーティをするのが大好きなのだとか。
「30過ぎてから、料理に目覚めたんです。それまでキッチンに立ったことなんて、なかったのに。ルームシェアしていた友達が異常なキレイ好きで、キッチンをぴかぴかにしてくれたので、なんか急にその気になって酒のつまみを作ったら、またそれをベタ褒めしてくれるものだから調子に乗って。今はいろんなもの、作ります。〈居酒屋やすだ〉と称して、お品書きとか書いてみたりして(笑)」
 料理上手は、経済的にも大きなメリット。
「私、たとえばサイゼリアにひとりで行っても1万円とか飲んじゃいますからね。マグナム抱えて飲みながら、すぐです。サイゼリアで1万超えるって、すごいでしょ?(笑)でも同じ1万円でも、自分でつまみを作って仲間と部屋飲みすれば、みんなでお腹いっぱい食べて飲めますから」
 人生の愉しみ方を覚えると、その分人生は楽しくなってくる。37歳の安田カナ、これからどんどん、俳優としての魅力も増してくるはずだ。
「30歳になったら体力落ちるぞって言われてビクビクしてたけど、落ちませんでした。35歳を超えるとガクッとくるって言われていたけど、今のところ、ビクともしません。だから意外とこの先も、まんま行けるんじゃないかなって」
 たくましく、明るく、元気よく。気がついたら注目の名優に、なっているかも!

  • 出演 :安田カナ やすだ かな

    1986年12月18日生まれ、東京都出身。桐朋学園芸術短期大学演劇専攻科修了。歌も踊りもこなし、少林寺拳法、殺陣などの特技を活かしてドラマや映画、舞台に出演。声優としても活動。味のあるキャラクターとして注目が集まっている。

    『ミュージカル ダブリンの鐘つきカビ人間』
    1996年の初演以来、何度も上演されてきた人気演目を、今回初めてミュージカル仕立てで公演。『チャーリーとチョコレート工場』などファンタジックな世界を作ることに定評のあるウォーリー木下が演出を手がける。
    とある山中で、旅行中のカップルが出逢ったひとりの老人。ふたりはいつのまにか老人が語る昔話の中に引きずりこまれ、奇妙な病が蔓延する町にたどりつくが・・・・。
    作 後藤ひろひと 脚色・演出 ウォーリー木下 音楽・音楽監督 中村大史
    出演 七五三掛龍也、吉澤閑也、伊原六花、加藤梨里香、松尾貴史、中村梅雀ほか。
    東京公演 2024年7月3日(水)~10日(水)東京国際フォーラム ホールC 
    大阪公演 2024年7月20日(土)~29日(月)COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

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    取材/文:岡本麻佑

    フリーライター歴30余年。女性誌、一般誌、新聞などで活動。俳優・タレント・アイドル・ミュージシャン・アーティスト・文化人から政治家まで幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。単行本、新書なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/