コンテンポラリーダンスを足場に、ミュージカルやミュージックビデオ、映画やドラマ、CMなどなど、活躍の場を広げてきた池田美佳。彼女が今、ちょっとワクワクしながら考えているのは、俳優という仕事。
「ふたつの柱があったらいいなと思ってます。自身が創作したダンス作品や表現で、世界中を旅して回るというのが、ひとつ。色んな文化、人種の人の反応を感じてみたい。もうひとつはいま日本や世界で活躍している一流の表現者やクリエイターの方たちと、映画や舞台で良いお仕事をすること。ふたつがバランスよくあったらいいなと」
 その思いはどんどんと広がり、
「漠然と、ですけど、ハリウッド映画に出たりレッドカーペットを歩くのが夢です(笑)。それはダンサーとしてか俳優としてか、はたまたクリエイティブチームの一員でも。
 身分不相応な夢なんだけど、ありえなくは、ない、みたいな(笑)。 先日、話題の映画『パーフェクトデイズ』というのを見まして。最近で一番、ぐっときた映画なのですが、あの作品で印象に残ったのは〝足るを知る〟ということ。今の自分の日常に満足して、質素にかつ淡々と日々を暮らす、それもひとつの幸せかもしれないけれど。一方で、とてつもなく大きな夢を掲げて、上を目指してヒリヒリした人生を送りながら、なぜだかわからないけどレッドカーペットを歩くのも捨てがたい(笑)。そんな妄想をしている時間も幸せです」
 そんな中、最近もうひとつ心に残ったのが、ウクライナから来たオペラ歌手たちとの共演。
「先日、ウクライナ支援の公演で、現地のオペラ歌手の方たちと同じ舞台に立ったんです。彼女たちは公演が終わると、戦争の真っ只中にある母国に帰っていきました。家族が待っているから、早く帰りたい、と言って。戦火の地に帰りたいというのはなんだか信じがたい事実でした。戦争をテーマにした作品に関わることが多かったのもあって、昔からどうにか戦争をなくしたい、と思っていて。自分が作る作品のテーマも、反戦だったり平和への祈りだったりが多いんです。ダンスが何の役に立てるのかはわからないけれど、舞台を見た人が、明日からちょっと頑張ろうと思ったり、周りの人に優しくしようと思えたり、逆に戦争の脅威を感じることで心が動いてくれたらとても意味があること。バタフライエフェクトのように、小さな行動が、地球の裏側まで伝わっていって、世界が少しでも良い方向に変わっていってくれたら」
 自分が自分であることを、体を使って表現するのが、コンテンポラリーダンス。池田美佳はその代表選手としてこれからも、踊り続ける。

  • 出演 :池田美佳 いけだ みか

    コンテンポラリーダンサー、舞踊家、振付家。
    秋田県出身。1984年生まれ。7歳でモダンダンスのスタジオに通い始め、みるみる頭角を
    現し、各地の全国コンクールで第1位を4回受賞。明治大学で演劇学を学び、在学中から
    ダンサーとして活躍。08年度現代舞踊協会新人賞受賞。2010年、平成22年度秋田県芸術選奨など受賞多数。以来、コンテンポラリーダンサー、モデル、女優として国内外の舞台や
    映像作品に出演。
     

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    取材/文:岡本麻佑

    フリーライター歴30余年。女性誌、一般誌、新聞などで活動。俳優・タレント・アイドル・ミュージシャン・アーティスト・文化人から政治家まで幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。単行本、新書なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/