神野美伽の最新曲は、『天の意のまま』。スケールの大きい、名曲だ。
「40年、演歌を歌ってきて、もうやり尽くしたのかな、と思っていたんですけど。この曲と出逢って、こういう曲は今までに無かった、と思いました。やり尽くしただなんて、簡単に言っちゃいけませんね(笑)。今この時代に、41年目に、この歌詩を歌える私は、幸せ者だと思います」
 歌詞ではなく、歌詩。作ったのは大御所・荒木とよひさ氏だ。つまり、神野美伽がかつて結婚していた元・夫。
「それ、みんなに言われます。結婚して、離婚しましたけど、仕事上の関係は変わりません。私という人間を一番知ってくれている人ですし、私も、おこがましいけど、とよひさ先生の詩を、たぶん一番理解して歌えるのは自分だと思っています。書かれてなくても、こういうことを表現したいんだな、ということは、誰よりもわかります。実際、私が今までに出した曲の7割以上、とよひさ先生の作品なんですよ」
 今も電話で話したり、食事をする機会もたびたびあるのだ、とか。
「そういうふうにしてくれたのは、現在の夫です。彼が現れなかったら、とよひさ先生と私の関係は、また違っていたと思う。夫は本当に良い人で、別に再婚したこと、隠していたわけじゃないんですけど。一般の方ですし、身近な人はみんな知っていたけど。別に大々的に公言する必要もないかな、と(笑)」
 趣味はこれといってないけれど、自宅には愛犬が3匹。忙しい毎日の中で、ほっとひと息つけるのは、この犬たちがいるおかげ。
「友達に杉本彩さんがいて、彼女は動物愛護の活動をしていますから、今までできる範囲で、手伝ってきたんです。保護した犬猫の里親さがしとか。譲渡会で引き取った犬を飼っていた時期もあります。コンサート会場で、お客様に募金していただいて、それを保護団体にお届けするとか、それくらいのことしか私はできていません。だから愛犬家とか保護活動家みたいに言われるのは、ちょっと気が引けますね」
 譲渡会で引き取ったのは、繁殖犬にされていた障害のある犬だった。
「見に行ったとき、ケージの片隅でうずくまって、首が垂れ下がっていたんです。でもね、引き取ったら元気を取り戻して、一生懸命生きてくれました。生きなきゃいけないんですよ、死ぬまで。犬だけじゃなく、命あるものはみんな、生きなきゃいけないんです!」
 75分間のインタビューで、40年を振り返ってもらった今回のYEO。いろんなことを乗り越えて、神野美伽は今、改めて、自分の歌と向き合おうとしている。
「45周年とか50周年とか、今は一切考えていません。もしかしたらこの先も、何かと出逢って、想像もつかないことに没頭するのかもしれない。まだ私が知らないだけで、ね。違うジャンルを歌うようになるのか。はたまた、歌わない人生を選ぶのか……。それでいい、と思えるようになりました。そういうところに、たどりついた、というのかな。たぶん私、どの歌い手さんよりも、今、歌うことを楽しんでいるのだと思います!」

  • 出演 :神野美伽  しんの みか

    1965年生まれ、大阪府出身。10歳で出演した歌番組でプロダクションスタッフの目にとまりスカウトされる。84年、高校卒業を待って演歌歌手としてデビュー。87年『NHK紅白歌合戦』初出場。99年日本人初の韓国デビュー。アメリカ、ニューヨークでもライブを継続的に行い、国内外のロックフェスに出場。他ジャンルのアーティストとのコラボレーションも多く、活動の幅を広げている。

     

    『天の意のまま』2024年3月6日発売
    作詩:荒木とよひさ 作曲:弦哲也 編曲:猪俣義周
    40周年記念曲第2弾。

    『SIZUKO! QUEEN OF BOOGIE』2024年4月17日Release
    神野美伽with ALL STAR JAZZ BAND
    2019年11月大阪COOL JAPAN PARKで公演した音楽劇『SIZUKO! QUEEN OF BOOGIE~ハイヒールとつけまつげ~』ではブギの女王・笠置シヅ子を神野美伽が演じ、服部良一メロディー全19曲を歌った。高評価を得たその舞台そのままに、珠玉の名曲11曲を収録。

    6月12日丸の内CottonClubにてアルバムレコ発ライブ決定!
    レコーディングに参加したミュージシャンが集合し一夜限りの特別プログラム。
    神野美伽with All Star Jazz Band
    1st Stage 16:30/2nd Stage 19:30 (開場は各公演の1時間前)

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    取材/文:岡本麻佑

    フリーライター歴30余年。女性誌、一般誌、新聞などで活動。俳優・タレント・アイドル・ミュージシャン・アーティスト・文化人から政治家まで幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。単行本、新書なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/