日本での活動は、韓流ドラマが大ヒットした頃から。『冬のソナタ』でペ・ヨンジュンさんがヨン様と呼ばれて大ブームを巻き起こしたのが2003年。今から約20年前のことだ。
「その頃、日本でイベントをやりませんか? と誘われて、女優のチャン・ナラさんとふたりで、たぶん中野サンプラザだったかな、やりました。すぐにファンクラブもできて、毎年1回、ファンミーティングとコンサートをやることになったんです。その頃はまったく日本語しゃべれないし、アルバムも出してないのにいつのまにかファンが増えていって、驚きました」
 数年後、兵役で芸能活動を中断。それ以後、日本での活動は途絶えていたけれど、韓国での仕事は兵役から復帰後も絶好調。いろいろな番組のMCを担当したり、ラジオのDJを務めたり、そしてもちろん、ドラマのOSTを作って歌って、大忙し。そんな中、
「2017年くらいにある人が、日本でやってみませんか? と誘ってくれました。それで日本でオリジナルアルバム作って、NHKのインタビューも受けて、Eテレの『テレビでハングル講座』にレギュラー出演するようになったんです」
 ハングル語講座は、実はかなりの人気番組。ドラマや音楽で韓国にハマった人が韓国の言葉を習い始めるときの、広くて明るい入り口だ。
「そこで僕、〝みなさん、韓国語がんばってください。僕も日本語がんばります!〟って約束しちゃったんです。視聴者のみなさんはすごく勉強してくれて、ペラペラになった人が多かったけど、僕は嘘つきで(笑)、なかなか上達しなかった。でもね、わかったんです、日本語できないと、日本では仕事がこない(笑)。じゃあ日本語やってみよう、と思って始めたのが、40歳のときです」
 そこからは、あっという間。
「1年半がんばって勉強して、日本語能力試験の1級をとりました。落ちちゃうとカッコ悪いから、とれて良かった(笑)。知人が綾小路きみまろさんの40分くらいのステージ映像を送ってくれて、それをくり返し見たのが、役に立ちました。ステージングとか会話術の勉強にもなりましたね」
 どんな質問を投げかけても、サクサクと答えてくれるソン・シギョン。でも次に、この質問をしたときだけは、ちょっと間が空いた。日本、好きですか?
「それは、ちょっと複雑な質問ですね。このインタビューを韓国人が読むと、人によっては怒ったりするから。いろいろ複雑なんです。
 だから僕は、いつか力を持ちたい。力を持たないと、何を言っても意味がないでしょう。僕は韓国にも日本にも、良いところはたくさんあるし、問題点もあると思う。そして韓国と日本は、互いに仲良くなれるはずだと思うんです。自分たちが持っていない特徴を相手が持っているのだから、磁石みたいに引き合うことはできる。なのに、それが難しい」
 最近の韓国は、経済的にも文化的にも、バリバリ元気。そして日本はなんだかちょっと、情け無くなるくらい、元気がない。
「よく聞かれます、どうして最近の韓国は調子良いんですか? って。それは僕にもわかりません(笑)。でも今の韓国と日本の違いは、なんとなくわかります。
 日本は守ろうとする。何かをすごく大事にする。簡単に捨てない。思いやりがあるのはわかるけど、安全のために時間がかかる。ていねいだけど、無駄な時間が過ぎていく。そして効率が悪いと気がついていても、誰も何も言わない。だから何も変わらない。
 韓国は変わろうとする。効率性を重視して、要らないものは後回しにして、とにかく早く早く、先に行こうとする。目標のために突っ走る。達成すると大喜びして、それが自信になる。その違いだと思います。
 ドラマでもそうでしょう。韓国ドラマはみんな言いたいことをはっきり言うし、ストレートに物事が進みますよね。でも日本のドラマには、言いたいことを言わないもどかしさとか息苦しさがあって、余韻があって、だから何なんだ? って思って見ているうちにエンドロールが流れる(笑)。あれ、僕から見るとすごくミステリアスで、魅力的です (笑)」
 そして今のところ韓国が、どうしても日本に勝てないものがある、という。
「アニメの世界観と、コンビニです(笑)。日本のコンビニのおにぎりはおいしいし、スイーツはすごくいいですよね! コンビニのシュークリーム、好きです。お酒もあるし、おでんもある。あと買ったことないですけど、水着のグラビアが載ってる雑誌もある。あれ、最初に見たときすごくショックでした。グラビア文化は日本にしかないから、堂々と立ち読みしている人が気になって気になって(笑)」