さて、今回優勝した、F3相当のレースに話を戻そう。
 実はJuju、昨年度はあまり良い成績を残せなかった。どうやらそこにはいろんな背景があったらしく。再び事情通に話を聞くと。
 昨年度Jujuがエントリーした『Wシリーズ』は、女性ドライバーだけが集まって速さを競うもの。エンジンだけでなく車輌も提供されるので、予算が少ない選手には、願ってもないレースだ。
 ところが主宰するのは、イギリスの団体。イギリス女性のドライバーには良い車輌があてがわれ、1位2位3位を独占。その他のドライバーたちにはポンコツ車輌があてがわれて、完走するのがやっとの状態。文句を言っても、契約書をタテにして、受け付けてもらえない、とか。
 Jujuサイドはこの結果を〝戦わせてもらえない、意図的に勝たせてもらえない状態が続いた〟とぼかして説明していたけど、さぞ、悔しかったに違いない。
 そして今年、Jujuはその分、より強いメンタルを胸に秘めて、シーズンを迎えた。
「今年は『ジーノックスF2000トロフィー』と『ユーロフォーミュラオープン』、ふたつにエントリーしました。『ジーノックス』は、そんなに予算はないけどレース好きの集団が集まるシリーズで、こっちは開幕戦でいきなり優勝することができて、すごく順調なすべりだしでした。『ユーロフォーミュラオープン』のほうは、莫大な予算を持ったモトパークというチームが君臨していて、ここで勝ってF1に進出するドライバーも多く、上を目指すドライバーの登竜門みたいな、その分、難しいシリーズなんです。ウチみたいなファミリーチームが挑んでも勝てるはずない。でもここで戦う経験は無駄にならないし、一度でも表彰台にあがれたら、それでOK、というつもりでした」
 開幕戦ではあっという間に10キロ差をつけられ、第2戦ではそれが5キロ差になり、第3戦では3キロ差になり。
「第4戦ではチーム全体が一体となって、父もメカニックとしていろんなチームからアドバイスを受けたり、この状況の中でどうすればいいのか、頑張ってくれました。そこで想像以上の結果、優勝が果たせたので、すごく良かったな、と」
 この快挙はもちろん反響が大きく、日本でもニュースで流れたり、取材が殺到したり。
「世界規格のF3レベルのレースで女性が優勝したのは史上初だったと、レースの後で知りました。すごく自信になります。そして、どのジャンルでも、上を目指して挑戦して頑張っている女性の方たちの励みになったら、すごくうれしいです」
 今、日本ではモータースポーツの人気は、イマイチ。かつてバブルの時代には、アイルトン・セナの人気を中心に、みんなが夢中になったものだけど。
「イタリアではサッカーとモータースポーツがすごい人気で、みんな日常的に話題にしています。日本ではたぶん、当時と比べると、スター選手が少ないのが、人気低迷の原因なのかも、と思います。もし仮に私がF1に乗ったりしたら、アジア人初の女性ドライバーということになるので、注目されるかもしれない。応援するドライバーがいたら、レースは何倍も面白くなるので、もっと身近なスポーツとして認知されるかもしれない。そうなってほしいし、そのためにも頑張らなきゃって、思います」

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Juju公式HP(インスタ等SNS情報あり)→https://juju10.com/