14歳で、デンマークに拠点を移した。
「日本にいると、年齢が若すぎてレースに出られないんです。それが一番大きな理由で、海外に行きました。日本では16歳にならないとレースに出られなくて、しかもそのレースがF4なんですね。私はF4に乗ったのが9歳のときだったのに、レースに出るまで何年も待たされました。今私が乗っているF3のレースに出るとなると、18歳まで待たないといけないんです。10代の1年は、すごく大きいですし。とりまく環境にもすごく左右されると思うし。ヨーロッパのデンマークなら14歳からレースに出られると聞いて、デンマークに決めました」
 フル出場できるレースを探して、『デンマークF4選手権』に参戦。2020年6月の初戦でいきなりデビューウインを飾り、話題になった。
 でもそこからはまた、新たな壁が待っていた。ここからは、事情通から聞いた話。
 もともとモータースポーツは、ヨーロッパの富裕層が道楽で始めたスポーツ。イギリスやフランス、ドイツ、イタリア、アメリカ出身の選手がメインで、大手の車メーカーなどがスポンサーとなり、盛り上げてきた。アジア圏や他のエリア出身の選手がいくら頑張っても、実はあまり、歓迎してはもらえない。
 あのアイルトン・セナさえ、疎外されていた。同時代のスター選手を優勝させるために、理不尽な判定を受けることが、多々あったという。そういう歴史を知っているモータースポーツファンの間では、Jujuのコーナリングがセナを彷彿とさせることもあって、彼女のことを〝ジャパニーズ・レディ・セナ〟と呼ぶ人もいるのだとか。
 もうひとつの壁は、資金面。なにしろモーター・スポーツは、お金がかかる。だからF4からF3、F2、そしてF1と、上位に行けばいくほど、車のメーカーなどがバックアップする大手チームの選手ばかりが、トロフィーを掲げることになる。で、Jujuが所属するのは、『野田レーシング』。父親の野田英樹氏が監督を勤め、母親がマネージングを担当、日本人のメカニック2名と、コンパクトなファミリー・チームだ。各地を転戦するときは、家族で一緒にモーターホーム、つまりはキャンピングカーで移動しながら、戦っている。
「向こうで生活するのを考えると、モーターホームが一番、自分たちに合っていると思います。飛行機や列車とか交通機関を利用するとなると、荷物をまとめてホテルに泊まって、またパッキングして戻ることになります。モーターホームなら家ごと移動しているようなものなので(笑)」
 戦う相手は、それだけじゃない。
「今、円安すぎて(笑)。家族4人でマクドナルドにいくと、軽く1万円超えますし、ラーメンなんか食べるとひとり2千円。本当に夢のない話ですけど、モータースポーツってすごくお金がかかるし、土台がしっかりしていないと、いくらドライバーが頑張っても結果に結びつかないんです。今、私はスポンサーさんがいて、応援してくれる方がいてレースができているので、感謝です。感謝しかないです」
 とはいえ、資金は充分、というわけにもいかず。父親の英樹氏曰く、
「ありがたいことに、理解してくださる企業は増えていますが、でも、まだまだです。与えられた環境の中でいかに頑張るか、だと思いますが。これだけの結果を出しているのに、モータースポーツに理解がある国とない国とでは、こんなに差があるのかなとは、感じますね」

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Juju公式HP(インスタ等SNS情報あり)→https://juju10.com/