上原実矩の女優人生は、まだまだ始まったばかり。しかも彼女、オーディションに強い。
「オーディションを受けていて、自分がすごく強く〝やりたい!〟と思う作品には、わりと願いが叶ってきているんです。『流浪の月』とか『来る』もそうだし。もちろんどの作品も役を獲るつもりで受けていますけど、本当に強く思っているときは、スイッチが入るのか、何かが伝わるのかもしれません」
 24歳、NHK朝の連続テレビ小説のオーディションも、受けている。
「今回、落ちました(笑)。今までは、そういう年齢だから受けている、みたいな感覚だったんですけど、沖縄にいるおばあちゃんにちゃんと見てもらえるとしたらやっぱり朝ドラだし、今回は、この物語に入りたいという強い気持ちがあって。でも、届かなかったみたい。けっこうショックでした。でも、そういう悔しさを感じるのってやっぱりすごい大事だなって思うし」
 挫折しながら、得るものもあった。
「審査のために提出するビデオを、マネージャーに録ってもらったんですけど、そこで私、入れ込み過ぎちゃって。自分が作り上げた人物像にこだわりすぎたんです。後から、マネジャーに言われたのが、もうちょっと多面的に作るべきだった、と。自分に集中するにしても、もっと人の意見も聞いてやるべきだって。そんなの、1年前に言われていたらたぶん、受け入れられなかったと思うんですけど、今の自分だと、これからは言われたことに対して素直に従ってみようとか、もうちょっと練習していこうとか、そんな気付きがありました」
 NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にも、ちょっとした役で出演した。
「少しだけなんですけど。名前がついているわけでもなく。でも撮影してから、ここはちゃんと役付きで帰ってこなければいけない場所だなって、感じました。そこに対してのすごい悔しさはあったので。すごい俳優さんたちがいっぱいいて、お祭りみたいな空気感だったんですけど、でも、別に引け目みたいなものは感じていなくて。ただただ、悔しさと戦闘意識だけが燃え上がる、というか(笑)」
 涙はすっかり、乾いたみたい。約1時間25分、話した言葉を文字にすると、19535文字。本当にインタビューが苦手だったら、こんなに話せるはずがない。女優・上原実矩が次にYEOに登場するとき、いったい何を、どんなふうに話してくれるのだろう?

  • 出演 :上原実矩  うえはら みく

    1998年11月4日生まれ。東京都出身。小学2年から子役として活動。2010年映画『君に届け』で主人公の少女期を演じた。2013年TVドラマ『放課後グルーヴ』に出演。2015年映画『暗殺教室』『ガールズステップ』で好演。2019年沖縄国際映画祭出品作『この街と私』で初主演。この秋公開される映画『ミューズは溺れない』で長編映画初主演。同作は、第22回TAMA NEW WAVEグランプリ/ベスト女優賞(上原実矩)、第15回田辺・弁慶映画祭でグランプリを含む4つの賞を受けた。

    ヒラタ オフィス/https://www.hirata-office.jp/talent_profile/woman/miku_uehara.html

    『ミューズは溺れない』
    高校の美術部に所属する朔子(上原実矩)は「溺れる朔子」の絵を描いた部員仲間の西原(若杉凩)の画才を目撃して絵を断念。その西原からモデル指名されたことに、複雑な思いを抱える。父子家庭で育った朔子は、父の再婚と義母の妊娠に戸惑うも、自分の気持ちを伝えられない。自分は何者で、どこに行こうとしているのか。朔子の高校3年生の夏が、過ぎていく。
    出演 上原実矩・若杉凩・森田想ほか
    テアトル新宿 9月30日(金)~10月6日(木) シネ・リーブル梅田10月14日(金)15日(土)〈田辺・弁慶セレクション2022〉

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    取材/文:岡本麻佑

    フリーライター歴30余年。女性誌、一般誌、新聞などで活動。俳優・タレント・アイドル・ミュージシャン・アーティスト・文化人から政治家まで幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。単行本、新書なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/