インタビューが苦手だというけれど、上原実矩は別に、人見知りというわけでもないらしい。ふつうに笑顔で話してくれる。言葉数も多い。で、次の質問を投げてみた。
 前回YEOに出てから、何をしてました?
「あれから、高校を卒業して、大学とかは行く予定はなかったので、そのまま役者を本業にしたいと思ってやっていたんですけど。職業としてやる、とは言いつつ、なんかまだそれが腑に落ちてないというか。高校を卒業したからじゃあ、っていうふうに切り替えられていなかったかなって」
 でも女優、だったわけでしょ?
「なんですけど、今思うと、自分ではそのつもりでいたけど、スイッチが入りきっていないよね、という時期でした、10代の頃は。バイトしながら、学生じゃなくなった、というだけで。作品がガツンと入っていたわけではないので、本気度がちょっと浅かったかな、っていうのが、ハタチくらいまで」
 それから?
「何してたっけ? ああ、だから海外に行ったんです。ニューヨークに。19歳になった年かな。マネジャーからも行っていいよって背中を押していただいたので、1ヶ月くらいです」
 で、どうでした?
「居心地良かったです。日本にいるとすごく閉鎖的というか、私が感じていたのは、なんかやっぱり他人の目をすごく、自分でも気にしやすいタイプだし、日本の環境がそういう傾向にあるのかなっていうのは感じていたので、ニューヨークの、誰も何も気にしていない感じが、私が何をしていても全然その街に溶け込めてる感覚が、すごい、楽しかったです。ニューヨークで働いている日本人女性のお話なんかも伺って、その厳しさだったり楽しさだったり、を、肌に感じて、すごい刺激になったり。(私自身は)自分の仕事をやるぞって、すごい決断をしたこともないまま、流れるままにここまで来てしまったという感じがあったので、その、仕事っていう認識があまりなかったんですよね、その頃は。もちろん職業として女優をやっていきたいという気持ちはあったんですけど。だから、そこでちょっとずつ、女優という仕事に気持ちが、ちょっとずつ芽生えてきたのがそのくらいの」
 ということは、ニューヨークで、スイッチが入った?
「いえ、そんなこともなくて(笑)」
 えー! 
「難しいな(笑)。バチってスイッチが入ったのは、いつなんだろう?」
 上原実矩がインタビューが苦手、という意味が、少しわかってきた。センテンスが長いのだ。センテンスが長い、ということは、気持ちの中にいっぱい要素があるということ。AはBです。という短いセンテンスでは表現しきれない、いろいろな思いを抱えている、ということ。それにまつわるさまざまな事情を、切り捨てることができないから、ひとつのセンテンスが長くなるのだ、きっと。
 誠実である、とも言える。正直だからこそ、かもしれない。彼女自身が言っていたように、周りの状況を慮る傾向、つまり忖度、もあるのかもしれない。
 でも困った。話が先に進まない!