ふせえりはこの夏、30年ぶりに舞台に立つ。
「ええ、ええ、まあ、そんな感じですね。そろそろかな、という感じ」
 肩の力が、抜けている。
「舞台は、始まったら確実に終わるから(笑)。映像だと準備も長いし、撮影の待ち時間もけっこうあったりして。でも舞台は上演時間が決まっているから。始まりから終わるまで、その時間をどう生きればいいのか、そこに集中すればいいだけだから。もうピンポイント集中っていうか、そこはちょっと、自分の瞬発力に期待してますね」
 吉岡里帆が主演するこの舞台、ふせえりが演じるのは、
「えっと、予言しない予言者っていう(笑)。なんか、楽しみです」
 この春、長く在籍した事務所を辞めて、昔からの知り合いと、新たに事務所を立ちあげた。こじんまりしたオフィスで、これからの仕事が始まる。
「今回タッグを組んだ人は、芝居について、とことん話せる人なんです。今の私にはそういうスタッフが必要だな、と思って。何か仕事が来たときに、こういう作品だからこうしようとか、こんな風に演じたいとか、コミュニケーションを取りながら、もっと仕事をていねいに、大事にして行きたい。ま、それほど私自身は変わらないのかもしれないけど(笑)」
 年齢不詳だけれど、キャリアは40年以上。フル活動するためには、体力が必要だ。熟年俳優はそれぞれ、いろんな体作りをしているけれど。
「なーんも、してないです。歩くだけ(笑)」
 以前は谷根千、谷中・根津・千駄木あたりを歩くのが好きだったという。
「でも最近なんか、おしゃれっぽくなっちゃって。そんなにおしゃれでなくてもいいんじゃないかって。もっと下町の、工場のいっぱいある辺りとか、昔の感じが残っているところがいいですね」
 趣味は、歩くだけじゃなく。
「電車に乗るの、好きなの。地方ロケがあると、その土地のローカル線とかにわざわざ乗りに行ったりします。千葉のいすみ鉄道とか、好きですね。JR外房線の大原から出てるでしょ。なんか、良いんです。川崎のほうの、JR鶴見線海芝浦支線の終着駅・海芝浦駅、海の上のね、あの駅とか、大好きです」
 月曜日から金曜日まで、あれこれ書いてきたけれど、伝わっただろうか? ふせえりという俳優の、この魅力。
「いいんです、いい加減な感じが伝われば(笑)。いい加減は、好い加減なんですよ。〝いい加減〟という言葉、私、大好きなんです」

  • 出演 :ふせえり

    女優。1962年9月22日生まれ。高校在学中に劇団『俳優小劇場』に入所。1984年頃からコントユニット『シティボーイズ』の舞台に出演。その後演劇ユニット『ラジカル・カジベリビンバ・システム』に参加。30歳からは舞台活動を中断し、映画、ドラマなど映像に活躍の場を移した。『ナースのお仕事』(2000~2002年)『時効警察』(2006年)などで存在感を発揮し、NHK朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』(2010年)『まれ』(2015年)『半分、青い』(2018年)に出演。数多くのドラマ・映画に出演している。2022年7月、『スルメが丘は花の匂い』で30年ぶりに舞台に立つことになり、注目を集めている。
    株式会社FINELAND所属。

  • 〈出演情報〉
    パルコ・プロデュース2022『スルメが丘は花の匂い』
    7月22日~7月31日紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
    8月からは大阪ほか全国6ヵ所を巡演。
    作・演出 岩崎う大(かもめんたる)
    出演 吉岡里帆 伊藤あさひ 鞘師里保 ふせえりほか

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    取材/文:岡本麻佑

    フリーライター歴30余年。女性誌、一般誌、新聞などで活動。俳優・タレント・アイドル・ミュージシャン・アーティスト・文化人から政治家まで幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。単行本、新書なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/