「ふせ えり」という名前が、ずっと気になっていた。映画やドラマを見ていて〝この人、誰?〟と気になる俳優がいて、調べるとたいてい、その名前。
 顔と名前が一致するようになってからも、〝いったいどんな人なんだろう?〟と、なんだかとても、気になる存在だったのだ。
 数多くの作品に登場し、絶妙な脱力感をかもしたり、すっとぼけたり、ピリッと画面を引き締めたり、知らん顔して物語を牽引していたり。作品によって、場面によって、役柄によっていろいろな顔を見せてくれる、スパイシーな存在。今週のYEOは、そんな謎の女優・ふせえりが主人公。金曜日まで連日更新しながら、なんとかその正体をつきとめたい。
 YEOに登場するのは、ついでのようなもの。この春、長年在籍した事務所を卒業して、新たなスタートを切った。心機一転、新しいポートレートを萩庭氏が撮ることになり、どうせなら、とインタビューすることに。
「でもさ、何もないのよ私。普通だし、平凡だから、何も話すことなくて」
 フツウとは思えないけど。まずはそのキャリアの始まりから。そもそもなぜ俳優を目指したのか、というと。
「ええとそれは、宝塚を観たから(笑)。そう言うとみんなに『意外』って驚かれるんだけど、私はあの『ベルサイユのばら』が流行った世代で、あの頃はみんな徹夜でチケット取って夢中で観たのね。で、私は、歌や踊りも良いと思ったけどそれよりも、レビューの前にやっているお芝居が好きだった。わかりやすいというか、ちゃんと何かを伝えてくれるものだったから、ああいうお芝居がやりたい、と思ったんですね。それも、ヒロインがやりたいとかじゃなくて、お芝居全体の、どこかに参加したいと思ったの。照明とか大道具とか、なんでもいいからそこに携わりたいと思った」
 高校在学中から俳優小劇場に入り、俳優修業をスタート。そこからは順調に?
「順調に行くわけ、ないじゃないですか! 順調なんてありえないから(笑)。大学進学もあったりして、いったん辞めたりもして、そこからちょこちょこ劇団の舞台とかやってはいたんですけど。でもね、たまたまシティボーイズと知り合いまして」
 そこからどうやって、ふせえりができあがったのか、明日からの連載、お楽しみに!

  • 出演 :ふせえり

    女優。1962年9月22日生まれ。高校在学中に劇団『俳優小劇場』に入所。1984年頃からコントユニット『シティボーイズ』の舞台に出演。その後演劇ユニット『ラジカル・カジベリビンバ・システム』に参加。30歳からは舞台活動を中断し、映画、ドラマなど映像に活躍の場を移した。『ナースのお仕事』(2000~2002年)『時効警察』(2006年)などで存在感を発揮し、NHK朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』(2010年)『まれ』(2015年)『半分、青い』(2018年)に出演。数多くのドラマ・映画に出演している。2022年7月、『スルメが丘は花の匂い』で30年ぶりに舞台に立つことになり、注目を集めている。
    株式会社FINELAND所属。

  • 〈出演情報〉
    パルコ・プロデュース2022『スルメが丘は花の匂い』
    7月22日~7月31日紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
    8月からは大阪ほか全国6ヵ所を巡演。
    作・演出 岩崎う大(かもめんたる)
    出演 吉岡里帆 伊藤あさひ 鞘師里保 ふせえりほか

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    取材/文:岡本麻佑

    フリーライター歴30余年。女性誌、一般誌、新聞などで活動。俳優・タレント・アイドル・ミュージシャン・アーティスト・文化人から政治家まで幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。単行本、新書なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/