舞台の仕事を一切辞めて、映像の仕事にシフト。当初は慣れないこともあったけど。
「私も必死でした。舞台とかお笑いのこととか、いろいろシティボーイズに教わったけど、やっぱりドラマとか映画の演技って、微妙に違うんです。同じことしていたらダメだし、とかいろいろ思いながら、でも〝絶対、見逃し三振はしないで帰ろう!〟というテイで。それはいつも思ってます、今も。振ってもヒットになるとは限らないけど、見逃しはしないぞ、と」
 舞台とドラマでは、勝手が違うとよく聞くけれど。
「映像はやっぱり、映ってナンボ、だから(笑)。舞台だったら、他の誰かが台詞を言ってるときも、舞台の上に立っている以上、誰かが見ているから、役のままそこに生きていますよね。でも映像は、ここぞ、というタイミングでやらないといけない。カメラがこっちに向いてないのに芝居してること、よくありました (笑)。でも芝居の勘とか距離の取り方とか、芝居を立体的にやることが身についていたから、そんなに苦労はしなかった、かな」
 着実に仕事のオファーが増えて、気が付けば各局のTVドラマに、欠かせない存在になっていた。ふつうなんだけど、ちょっと個性的、若干クセありの登場人物を演じることが多い。
「そういうのが好きなわけじゃないんです。それくらいしか、あまりできない。ていうか、正統派じゃないのかな? やっぱり、ずっとやってきて、独特な間だとかよく言われるけど、自分では正統派のつもりで(笑)。ま、一風変わった、とは、よく言われます」
 世の中いろんな人がいるのだから、ドラマの世界の中にも、いろんな人がいるのは当たり前。ちょっとクセモノの気配があると、見ているこちらは〝あー、いるよね、こういう人!〟って、逆にちょっと、リアリティを感じたりもする。
「楽しいです、いろんな人の人生を演じるのが。悪いヤツとか、財閥の奥様とか、離婚した中年女性とか白髪のおばあちゃんとか。その人の人生を生きられると思うと、すごい楽しい。もともとの私自身は、さっきも言ったけどすごいフツウだし、そもそもすごいいい加減だったりするんです。自分で自分がわからない。自分、信用してないし。一番信用ならないのが自分だなって、私、思ってます」