30歳で、仕事の場を映像にシフトしたふせえり。以来20余年の間には、スランプも。
「ありましたね。途中でなんか、邪念が出てくるとダメなんだと思うんです。よく映ろうとか、うまく見せようとか」
 そういうことも、あるんだ?
「ありますよ、私、邪念だらけだから(笑)。うまく見せたい、台詞をぱーっと言える女優に見せたいとか、思ったりするんです。でもそうすると途端に、ダメですね。なんか、あまり台詞がうまく言えなくなっちゃって」
 どうしよう? そう思っていたら、救いの神に出会った。
「金田明夫さんていう役者さんがいるんですけど。『金田さん、どうしよう? こういうことなんだけど』って相談したら、『みんな、そういう時期があるんだよ。そういうときは100回やるんだ。台詞を100回やれば、大丈夫だよ。とにかく100回、真面目にやってみ?』って」
 100回、やってみた。すると、乗り越えることができた。
「ずうっと今でも、金田さんの言葉は守っています。毎回、100回はやろうと思ってます」
 こんなおまけの話もしてくれた。
「その話を先日、某有名女優さんにしたんです。するとその女優さんも、同じことがあったんですって。その方はあの、杉村春子先生に相談したそうです。すると杉村先生は、『1000回やらなきゃダメよ』って。『1000回やればできるのよ。あなた何回やったの?』って言われたそうです(笑)」
 遠い昔、スランプをそうやって乗り越えた今、思うのは。
「邪念があると、やっぱりダメ、失敗するんです。キレイに見せたいとかうまく見せたいとか。もちろんスターさんは、そういう思いも必要なのだろうけれど。私の場合は、そういうことは、つまらないことだなって思って。つまらない考え方をする自分は、やっぱりつまんないヤツだなって(笑)」