モデルって、代理人なのかもしれない。〝この服を着たら、こうなります〟〝この場所に行くと、こんな風景が待っています〟〝こんな着こなしをすると、こう見えます〟を読者の代わりに体現するお仕事。夢があって笑顔があって、でもそれは、架空の世界。
 だからそれなりに消耗する。元プチモたちはオフレコで、こんなことを言っていた。
「モデルの仕事って、カメラ前に立つとき、自分の中の何かを消す必要があるんです。いつもじゃないけど。それが重なると、だんだんつらくなることがあって」
 勝手に誤解されることも、しばしば。
「いつも高級レストランで食事しておしゃれなバーでお酒飲んでるって思われがちで(笑)。そういうイメージを持たれるのも、しょうがないのかもしれないけど」
「かわいいキャラとか強気キャラとか、仕事のイメージをそのまま当てはめられると、ちょっと困りますよね。あなたって、こういう人でしょ? って言われても」
 外見がそのまま、自分の価値になる、そんなツラさもある。
「『ちょっと太った?』とか『肌、荒れてるね』とか、ネガティブなことを言われると、すごく落ち込みました。向こうはそんな気がなくても、自分が全否定されたような気がして。ある意味、自分は商品なのだから、そう言われてもしょうがない立場なんだって理解していたつもりだけれど」
 とはいえ、仕事は仕事。
「すごくキレイに撮ってもらうことが多いですけど、でもそれは一流のヘアメイクさんがメイクして、スタイリストさんが衣装を用意して、プロのカメラマンが撮ってくれるから、成り立っている世界なんですよね。だからふだんの私とは、別人だと思っています(笑)」
 そんな仕事を10代のうちに経験して、そこから20年後の彼女たち。リアルな現実の中をみんな今、たくましく生きている。
「30代半ばくらいから、やっぱり内面が見た目に出てくるものだなって痛感したんです。中身を磨いていかないと、この先、ヤバイかなって(笑)」
 撮影を終えると7人は三々五々、散っていった。子どもの待つ家へ、仕事先へ、夕飯の買い物をしにスーパーマーケットへ、オフィスへ。中のひとりが、手をふりながら叫んだ。
「久しぶりにみんなと撮影したけど、楽しかった! 10代の頃に戻ったみたいでした!」
 今過ごすこの時間が、明日からのキレイにつながっていく。

  • Styling Direction IKURA Tak IKURA
    インスタグラムhttps://www.instagram.com/taky_ikura/?hl=ja
    Hair & Makeup 藍野律子 RITSUKO

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    取材/文:岡本麻佑

    フリーライター歴30余年。女性誌、一般誌、新聞などで活動。俳優・タレント・アイドル・ミュージシャン・アーティスト・文化人から政治家まで幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。単行本、新書なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/