4 いいことばかりじゃない
21歳の猫・がる
- Magazine ID: 4068
- Posted: 2022.02.24
猫はかわいい。けど、かわいいだけじゃない。
がるはときどき、ものすごい形相で咳き込むクセがある。最初にそれを見たときは、死んじゃうのかと、ビビった。これも猫あるあるで、猫は胃の中に貯まった毛玉を吐き出すために、猛烈に咳き込むことがあるのだ。そして抜け毛のカタマリを吐き出すと、何事も無かったかのようにケロッとしている。
そしてがるはそれとは別に、毛玉とは関係なく、咳き込むことがある。生まれてすぐに捨てられて、体にそのときのダメージが残っているのかも知れず、長生きはできないかも、と、秘かに覚悟していた。
10歳くらいから、血液検査をすると腎臓の数値が悪いことが判明し、薬(錠剤)を飲ませるようになった。そして16歳くらいから、輸液を点滴するようになった。その頃通っていた動物病院の先生が、『腎臓の病気の予防的処置として、効果はあると思いますよ』と、勧めてくれたのだ。腎臓の状態を保つためには十分な水分が必要で、自分から水を飲んでくれればいいのだけれど、頼んでも猫は水をゴクゴク飲んではくれない。だから皮下注射で水分を補給する。飼い主である私が、自宅でがるに、点滴をする。
輸液の点滴を、最初のうちは週に1回、70㎖。血液検査をするたびに、その数値に応じてその回数も量も増えてきて、今は毎日100㎖。毎朝点滴していると言うと、みんなビックリする。もうすぐ死にそうなのかと、気の毒そうな顔をする人もいる。でも、点滴を始めてもう6年。がるも私も慣れたものだ。
医者に連れて行くとか薬や点滴をするとか、体に関することは飼い主として当然の義務として、猫を飼っていると他にもいろいろ、予想外の出来事に遭遇する。
まずは睡眠の妨害だ。夜、私がベッドに入って睡眠に入ろうか、という絶妙のタイミングで、にゃおにゃお鳴き始める。途端に目が覚めてしまい、それから延々、寝付けないこともしばしば。原稿を書いていて夜中を過ぎ、2時3時にようやくベッドに潜り込んだときでも、朝方6時とか7時に、にゃおーん!と鳴いて睡眠の邪魔をする。にゃおにゃおと30分ばかり鳴き続けることもある。そのくせ、昼間は鳴かない。
猫は毛が抜ける。そりゃあもう、毛が抜ける。服に猫の毛がついていても気にしない人間になるしかない。もちろん、部屋の掃除が好きになることも、必須条件だ。
食欲にムラがあって、突然、食べなくなる。この猫缶がお気に入り、と思っていても、ある日突然、『飽きたわ』とばかりに、見向きもしなくなる。あわててスーパーのペット関連売り場に行って、あれやこれやといろんな種類のエサを買い集め、次のお気に入りを探す日々が続く。
旅行にも行けない。プライベートの旅行は、1泊ならできるけど、それ以上は無理。仕事で海外出張のときには、キャットシッターさんを頼んで出かけた。部屋の鍵を渡しておくと、留守中来てくれて、1日に30分程度、トイレ掃除とエサと水の交換、そしてちょっと猫と遊んでくれる。助かるけど、お金はかかる。
猫はかわいいけど、猫を飼っていると、いいことばかりじゃないのだ。
なのに、居てくれて良かった、と思う。毛だらけでわがままで不可解で、愛想が良いわけでもないのに。