4 動物嫌いの同居人
二十歳のわんこ さくら
- Magazine ID: 4058
- Posted: 2022.01.13
佐藤さんと一緒に暮らしたり、佐藤さんの実家で暮らしたり。さくらは長い人生を、愛情をたっぷり受け止めながら、その場そのとき、100%で生きてきた。
けれど4年前、さくらの環境にちょっとした変化が。佐藤さんが同じ写真業界の山岸伸さんと結婚、同居することになったのだ。
山岸さんといえば数多くのグラビア、写真集を発表してきた、カメラマン界のレジェンド。2009年に慢性骨髄性白血病と診断され、それを公表したものの〝撮影しているほうが元気でいられる〟と、現在も投薬治療を続け、副作用と闘いながら、精力的に撮影を続けている。カッコいいおじさんだ。
「でも僕、動物嫌いなんです。大嫌いなんです。匂いとか毛とか、ね。僕はペットの撮影とかしないし、撮影に動物を使うことがあっても、撮影時間以外は僕の目に入らない場所に連れて行けって、そういう条件じゃないとやらないくらいで。ほんと、嫌いなんだよね」
さくら、危うし!
「で、彼女(佐藤さん)が犬を飼っているのは知っていたけど、どうやって飼っているかも知らなかったし。結婚を決めた2018年の時点で、その犬は今年の夏は超えられないかもしれないって言うから、じゃあまあ、しょうがないかなって」
なるほど、で、今は?
「ウチに来ちゃって一緒にいたら、もう、嫌いとか好きとかじゃないから。それを超えないと一緒にいられないから。まあね、あとどれくらいもつかわからないから、その間はよくしてあげたいと思うし。だからまあ、結婚して、プラスさくらが来たということで、適当にふたりの間をとりもってくれている、というか。最初はやっぱり抵抗あったけど、なんでもそうですけどね、情が移るよね(笑)」
しぶしぶ同居を認めた山岸さん、今はさくらと一緒にお風呂に入り、一緒に寝ているとか。〝しょうがない〟という言葉とは裏腹に、さくらにメロメロ、に、見えなくもない。
「かわいいっていうより、なんか、自分を見ているみたいな気がしますね、この、老いている犬が。ちょっと転んでからよちよち歩いたり、口が臭かったり(笑)。よく頑張ってますよ、さくらも、僕も。共通の何かがあると思います。さくらを見てると、ああ、ああって。この子はちゃんとわかってるな、と思う。生きるってこういうことだよなって、ね」
生きるということ、そして共に生きるということを、さくらは教えてくれている。さくらのその存在は飼い主であるふたりの、カメラマンとしての視点にも、なにか影響を与えているのかもしれない。2022年1月28日からライカギャラリー東京(ライカ銀座店2F)ライカプロフェッショナルストア東京で開催されるふたりの作品展『伸×YAMAGISHI×倫子』山岸伸『GOKAN』/佐藤倫子『MARINELAND』が、楽しみになってきた。