「お芝居がやりたい、と思って東京に来たんですけど、やっぱりその、何からどう始めればいいのかわからなくて」
 大学生活を送りながらアンテナを張り巡らし、オーディション情報を入手しては挑戦をくり返した。初舞台を踏んだのは、19歳のとき。
「『ジャンヌダルク』という作品です。それもやっぱり兵士役の男の子100人募集というオーディションでした(笑)。ダメモトで行ってみたら、女の子の役もあるということで、出演できたんです」
 その舞台で共演した方のつながりで八嶋智人氏と知り合い〝ウチの劇団の公演、見に来なよ〟といわれて行ったのが、劇団カムカムミニキーナの舞台。
「初めて見たとき衝撃的すぎて、よくわからなさすぎて。大学で文学座さんとか俳優座さんの、有名な戯曲のお芝居は観ていたんですけど、カムカムは全然違うアプローチだったので。次の公演でオーディションします、というチラシをもらったので、出演したらこの難解な舞台のからくりがわかるのかな、と思って飛びこみました。このあたりから、お芝居にのめり込んじゃったんですね」
 ところが、劇団カムカムミニキーナに入団を決めた翌日、彼女は友だちとニューヨークへ。前々から旅行の約束をしていたのだ。そしてブロードウェイで初めてミュージカルを見た瞬間、虜になった。
「わ、ミュージカルもやりたい! と思っちゃったんですよ。それまでミュージカルといえば『アラジン』とか『ライオンキング』だと思っていて、もちろんそういうの、大好きなんですけど、『シカゴ』を見たら素晴らしくて! 特にあの、ヴェルマ・ケリー役のアムラ=フェイ・ライトさん。プラチナブロンドのショートヘアで、とにかく歌も踊りもなにもかも素晴らしい。まわりで踊っているアンサンブルの人も、ひとりひとりが〝私を見て!〟って感じで。いつか、上手から下手に駆け抜けるだけでもいいから、この舞台に立ちたい! って思いました」
 日本に戻ってからは、アルバイトをしながら、カムカムの劇団員として活動。
「やっぱり、せっかく入団したからには何かを得たいし、恩返しもしたいし。バイトしながら約3年間、頑張りました」
 そのかたわら、合間をみてはニューヨークに行き、ダンスを習ったり発声練習をしたり。
 そしてニューヨークではもうひとつ、貴重な経験が彼女を待っていた。