「本当は私、教師になろうと思っていたんです。父が教員をやっていて、母は昔、看護師をしていて。高校を出るとき、特にやりたいことも見つからなくて、ちょっと親に媚を売ったのかな、双方の仕事をミックスした職業、養護教員になろうと思って、大学に進学したんです。でも大学に行って初日に、挫折しまして」
 くじけるの、早!
「私、雑踏が苦手なんです。人がたくさんいる場所が、耐えられない。で、学校の講堂に行ったら、わんさか人がいて、あ、私ここ、苦手だなって」
 しかも。
「大学に行くと、進路が決まるじゃないですか。そこで私、『あ、自分は教師になる器じゃないな』って思っちゃったんです。まだ何も経験していないのに、人生の初日で立ち止まってしまったんですね。これでいいのか、私がやりたいのは何なの?って」
 そのまま大学へは行かずに、札幌の街中をウロウロするうちに1年留年が決まり、そんな頃に彼女は、芸能界に続く道を歩き始めた。
「地下鉄の改札あたりで、声をかけられたんです。親には自分を試したいから、1年間だけ好きなことをさせて欲しいと言って、北海道テレビのバラエティ番組に出ていました」
 ちょっと待った! 人がわんさかいるのが苦手だとか、言ってませんでした?
「そういう自分を変えたかったんですよね(笑)。で、その番組に、東京から景山民夫さんが構成と出演でいらしていて、声をかけて下さったんです、『面白い顔してるね』って。『芸能界に興味があるなら、今度東京に遊びに来ませんか?』って」
 友だちを誘って、一緒に東京へ。すると翌日、景山氏のマネジャーが『オーディションに行ってみようか』と、広告代理店へ連れて行ってくれた。その場でコマーシャル出演が即決したという。その後しばらくモデルの仕事をするうちに、当時人気女性タレントの登竜門と言われていたクラリオンガールのコンテストに出場、準グランプリをゲット。それがきっかけで映画のオーディションを受け、『童貞物語』のヒロインに。
 あっという間に次から次へと仕事が決まって、順調そのもの。
「でもなんか、自分には合わないなって思いました。だから楽しいとも思えなかった。とにかく人前に出るのがキライで、それがコンプレックスで。だから芸能界に入れば何か変われる、自分が変われるかな、と思ったんですけど、疲れました」
 そろそろ北海道に戻ろうと思っていた矢先に、NHK朝ドラのオーディションが。
「そのとき、すごく人気のアイドルさんが主演することがすでに決まっている、という噂が流れていたんです。だから形だけ、ダメモトでオーディション受けて、辞めて帰るつもりでした。そう思っていたから伸び伸びとオーディションを受けられたのかもしれないけど(笑)」
 古村比呂が主演した朝ドラ『チョッちゃん』は設定が〈北海道の女の子〉ということで、彼女にピッタリ。演技はまだまだ、だったけれど、現場でビシバシとしごかれているうちに、「頑張ろうって。この仕事、やっていこうと思ったんです」。