恋多き女性であることも、前回の記事に書いた。恋は渇望、その渇望が、芸術を生み出す。だから、というわけじゃないけど、いつも彼女は、恋をしている。今、夢中なのは、葛飾北斎だ。
「そう、私、北斎に恋い焦がれています。彼は75歳くらいのときに、自分のこれからの人生設計をしたんですって。たとえば80歳のときにはこういう絵を描く、85ではこう描く、90ではって、95歳くらいまでそれがあったの。で、それを全部クリアしてから亡くなったと聞きました。その話を知って、あ、そういうこともありえるんだ、と思った。今できることを、どんどん楽しくやればいい。そうやって私、この先も生きていけると思っています」
 そしてもちろん今、バッハも恋のお相手。いや、熱愛の真っ最中だ。
「好きとか興味があるとか、バッハに関してはそういうレベルじゃないんです。畏れ、ですね。畏れているからこそ、避けて通れない。緻密でパーフェクトで壮大で、だからこそ、バッハを通り抜けたら、また違う地平に立てるような気がする。その先の自分が、今、楽しみ。これぞJOY of Music、ですね!」

  • 出演 :田崎悦子 たさき えつこ

    桐朋学園音楽科高校卒業後、フルブライト奨学金を得てニューヨーク・ジュリアード音楽院に留学。卒業後30年間、国際的に演奏活動を続けた。1971年ヨーロッパ・デビュー。72年カーネギーホール・デビュー。79年世界的指揮者ゲオルグ・ショルティに認められ、シカゴ・シンフォニーとデビュー。サヴァリッシュ、スラットキン、ブロムシュテット、小澤征爾など世界第一線の指揮者と協演。日本でもN響をはじめ各地のオーケストラと協演。2015年には『三大作曲家の遺言』シリーズでベートーヴェン、ブラームス、シューベルトを演奏。絶賛を浴び、NHKBSプレミアムにて複数回放送された。アメリカワシントン大学教授、東京音楽大学教授、桐朋学園大学および同大大学院特任教授を歴任。2002年よりピアノ合宿『Joy of Music』八ヶ岳と奈良、カワイ表参道「パウゼ」にてシリーズ『Joy of Chamber Music』『Joy of Music40+』総合ディレクター。

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  • 【公演情報】

    『Joy of Music』全3回シリーズ ‘21~’22
    第1回『Joy of Bach』21年6月6日(日)
    東京文化会館小ホール 13時15分開場 14時開演
    全席自由:一般5000円 学生3000円
    問合せ カメラータ・トウキョウ 03(5790)5560
    http://www.camerata.co.jp/

    第2回『Joy of Brahms』11月14日(日)14時開演
    第3回『Joy of Schubert』22年6月予定

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    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/