『毛皮のマリー』の主要キャストに抜擢され、大役を見事演じきった藤堂日向。だけどそれ以降しばらく、俳優としての活動は低迷していたという。
「どうも僕、天狗になっていたみたいなんです。自分がどうにかできている、みたいなことを思っちゃったんですね。全然、そうじゃないのに。いろんな人に『ちょっと鼻高くなってるんじゃないの?』って言われました。自分では気が付かなかった。でも、あるオーディションに落ちて、その理由を関係者から聞いたら、『なんか、偉そうだった』って。それを聞いて不意を突かれた、というか。偉そうに芝居してるって、すごくダサいじゃないですか。役者にとってそれ、1番不名誉なことだと思う。そのときから、いつでも謙虚でいなくちゃって、すごく学びました」
 そんなタイミングで、またもオーディションに挑戦。それが就職情報サイト・マイナビの、『マイナビ2021 手紙』篇。『どらえもん』の、のび太が、会社説明会に臨むシーンで、実写版のび太を演じたのだ。ネットでは〝まさに、のび太そのもの〟〝再現度、高い!〟と話題になった。
「僕、仕事のときはコンタクトですけど、ふだんはずっとメガネなので、メガネが似合う顔と髪型だったのかな、と(笑)」
 さらにもうひとつ、オーディションで大きなチャンスをゲット。2021年7月に全国ロードショー公開を予定している映画『東京リベンジャーズ』だ。そうそうたる人気若手俳優たちが、揃ってワルそーな高校生に扮しているポスターが、なかなか刺激的。藤堂日向も、その中のひとりを熱演している。
「威勢が良いけど喧嘩は弱い、調子に乗ってる奴、山岸っていう役を演じてます。多くの役はみんな俳優が決まっている中、僕の役はオーディションでした。最終オーディションではもうひとり候補がいて、ふたりで競ったんですけど、その場で僕に決まって、うれしいけどちょっと、いたたまれない気持ちになりました」
 2020年に撮影が始まったものの、コロナ禍で撮影は一時期中断。待機中、精神的に不安定になった時期もあったとか。
「自分のコントロールがうまくいかなくなってしまって。ふだんは人と関わったり接したりすることで自分の心のバランスを取っていたんだと、ああなって初めて気が付きました。ひとりで毎日、ぼーっと考えていると、宇宙とか自分の心の闇とかいろいろ、とりとめもないことを考えてしまって、ヤバかったです。でもその時期を乗り越えたからこそ、家族とか友人とか仕事とかに助けられて生きているんだなって、実感しました」