2 愚直であれ
俳優 藤堂日向
- Magazine ID: 4026
- Posted: 2021.02.23
藤堂日向が役者修業の第一歩として選んだのは、エキストラの事務所。実際の撮影現場を体感できるし、演技力を必要とされることもある。運が良ければ役をもらえる可能性もあるし、自分をアピールできるかも。業界内にいれば、オーディションに参加することで、ステップアップも夢じゃない。
「だから僕、エキストラに行く度に、どうやって爪痕を残すか、ずっと考えていました。エキストラと言ってもいろんな方がいらっしゃるから、とにかく他のみんなより何かしら秀でていないとダメだ、本気でやろう、と。撮影が始まるとカメラの位置を速攻で把握して、なるべく映り込む場所で、懸命にやりました。
そもそも、最初に演技の指導を受けたとき、たったひと言の台詞を1時間、何度も何度も言わされて、ずーっとダメ出しされたことがあったんです。そのとき先輩から〝こいつはバカと天才、紙一重だ〟って言われて、妙に納得というか、腑に落ちることがあった。役者って、他者からの評価しかないんです。自分がどんなにもがいても、他者の反応がすべて。だからこそ、愚直でありたい。今もその経験が、自分のモチベーションになっています。愚直であれ、と、いつも自分にくり返しています」
ハードな現場もあったらしい。
「真冬に、ミュージックビデオの撮影で、雨の中踊りまくる、という現場に参加したんです。そのとき、メインキャストの人たちは暖かいロケバスで休憩しているのに、僕たちはタオルを配られただけで、ガタガタ震えながら外で待っていた。唇から血が出るほど悔しくて、いつか絶対にあそこに行ってやろうって、本気で思いました」
なのに、延々続くエキストラ生活。いつまで経ってもチャンスは巡ってこない。エキストラ事務所を転々とし、どんな役でもいい、オーディションを受けたいと思いながら、オーディションに参加する機会すら、回ってこなかった。モヤモヤしながら日々を過ごし、やっと1本、CMのオーディションがあった。そして見事、合格!
その撮影現場で出会った人脈をたどって、とうとう彼はエキストラ事務所を退所、芸能事務所(株式会社アプレ)に所属することにした。するとそこから、藤堂日向の運命が、ガラッと大きく回り始めたのだ。