大きくなったら何になる? と聞かれたとき、あなたはどう答えていた?
 幼稚園とか小学生ならともかく、中学・高校と成長するとともに、その質問に対する回答は現実味を増していく。自分は何になりたいのだろう? 何になれるのだろう? 何をしたいのだろう?
 高柳卓也は、中学生の時点で、2つの夢を持っていたという。
「ひとつが歌手。で、もうひとつがプロレスラーでした。小さい頃はドリフターズとプロレスと牛乳が人生のすべてで、外で遊ばない日はないくらい、元気に外を駆け回っていた。身体も大きいほうでしたし、UWFが大好きでした。その一方で、親がやっていた居酒屋のカウンターに、ワケありのカップルが寄り添っているのも見ていました。鈴木雅之さんの歌に『ギルティ』っていう、竹内マリアさんと山下達郎さんが作った曲があるんですけど、あの世界です。そこから鈴木さんの声が好きになって、ソウルミュージックにたどりつき、歌ってみたくなったんです」
 歌手とかプロレスラーとか、夢を見るのはよくある話。だけどみんな、諦めたり、向いてなかったり、才能がないことに気が付いてしまったり。人生が始まった頃に胸に抱いた夢を実現する人は、たぶんほんの、ひと握りしかいない。
 でも、諦めなければ、夢は続く、はず。
 今週のYEOは、そのふたつの夢を心に秘めたまま生きてきた、高柳卓也が主人公。ポルトガルの民族歌謡であるファドを愛し、日本人でありながらポルトガルの魂を歌い続けているファディスタ(ファドを歌う人)だ。彼はどうやって自分の夢を形にすることができたのか。金曜日まで連日更新しながらリポートする。
 今週のYEOは、なんかちょっとファドっぽい、かも。

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【撮影協力】
マヌエル・カーザ・デ・ファド https://manuel.jp/manuelyotsuya/

  • 出演 :高柳卓也  たかやなぎ たくや

    1974年生まれ、東京都出身。中学時代からソウルミュージックに憧れ、16歳からヴォイス・トレーニングを開始。10代からソウルミュージック、ゴスペルを中心に音楽活動に励み、20代はいくつかのゴスペルグループ、男性ソウルコーラスグループのメンバーとして都内各地のライブハウス、教会、米軍キャンプなどでライブ活動を重ねた。一方20歳頃ファドに出会い、23歳でポルトガルに滞在している。2003年、ソウル、ゴスペルの活動に区切りをつけ、単身ポルトガルに渡った。長期滞在しながらポルトガル語を習得、ファド・レストランなどで歌いながらファドの真髄に迫り、日本人のファド歌いとして活動を開始。2007年に帰国後も毎年ポルトガルに渡り、現地のミュージシャンと交流しながらライブ、レコーディングなどを重ね、日本とポルトガル両国でファディスタとして活動を続けている。

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    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。
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  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/