2 プライドなんて
ジャズヴォーカリスト Shiho
- Magazine ID: 4006
- Posted: 2020.09.29
ライブハウスで弾き語りをするShihoに、対バンで出ていたベーシストが声をかけてきた。
「すごく面白いことやってるねって。私より2回りくらい年上の、ベースを弾いてる男性でした。たぶん私が若いのに、ジャズのスタンダードとかキャロル・キングとか、古い曲ばかりやっていたので、オジサンが好みそうな曲ばかりやっていたので、珍しかったんでしょうね。一緒にやらないか?って。メンバー集めるからバンドを組もうって」
そのとき参加したギタリストが、横田明紀男。のちに彼女とFried Prideを立ちあげることになる、超絶テクニックの権化のような存在だった。
「とにかくすごいギターが上手い人です。私にとってはほぼ初めて会うギタリストだったので、あのくらいはみんな普通にできるものだと思っていたけど(笑)、他のギタリストと仕事するようになって、あれ、なんかあの人、すごい人なんだ! って後から気付きました」
そんなこんなで横田明紀男とShihoが組んだユニットが、Fried Pride。知らない人はYouTubeで見てみて。とにかくすごい! から。
「その頃アメリカにTuck&Pattiっていうギターとヴォーカルのユニットがいて、けっこう話題になっていたんです。ジャズシーンでは有名です。横田さんは、ああいうことをたぶんやりたいと思ったのかな。ふだん彼はスタジオ仕事とかタレントのバックとか、裏方の仕事が多かったけれど、もっと自分も前に出たいと思ったのかもしれません」
ギターとヴォーカルのユニット、と言われて想像するよりもずっと、その音は豊かで過激でカッコイイ。
「当初はTuck&Pattiのコピーみたいに言われたけど、私たち、どんどんアグレッシブになっていきました。なにしろ横田さんのギターが、まるでオーケストラみたいにあらゆる音を出すし、私もヴォイパみたいなことをやったり、プレイスタイルがどんどん激しくなって」
ちなみに、そのユニット名の由来を聞くと。
「横田さんがつけたんです。長年ミュージシャンをやっていたりすると、俺はジャズマンだからこんなことはできないとか、やりたくないとか、そういうちょっとつまんないプライドみたいなものを持ちがちだ、と。最初はそうじゃなかったはずなのに、そんなつまらないプライドだったら、油で揚げて捨てちまえって、そういう意味らしいです、はい」