歩く道を変えれば、会う人も変わる。再び歌を志した髙橋は、ミュージックシーンで活躍する人と出逢い、貴重なアドバイスをもらった。
「『カラオケで歌うのと、歌い手として人前で歌うのとでは全然違う。本気でやっていきたいなら、ライブをやったほうがいい』と言われました。なるほど、そういうものかと思って、『えい!』と踏み切ったのが、54歳のときです」
 六本木にあったチャペルを借りて、初のコンサートライブ。とはいえ、歌手としての髙橋貢は、ほとんど無名だ。
「それで、ヘア&メイクのセミナーとセットにしました。一般の方にヘア&メイクのコツをお教えして、ついでに歌も聴いていただくんです。ギターとベースとピアノとバイオリンをバックに、年に3回か4回、無理してやっても仕方ないので、できるペースで」
 歌うのは、演歌。昭和歌謡やポップス、そしてたまに、シャンソンも。
「高校時代は新御三家の時代で、郷ひろみさん、西城秀樹さん、野口五郎さんの歌が多かったんです。でも途中でヴォイストレーニングの先生から、『津軽海峡冬景色』を勧められて、歌ってみたら、演歌のほうが向いているかも、と言われました。そう言われて歌っているうちに、演歌にどっぷりハマってしまったんです」
 最近ステージで歌ったのは、石川さゆり、ちあきなおみ、吉幾三、氷川きよし、山内惠介に都はるみ。
「歌詞が、ズーンと来るんです。年齢を重ねて来たからだと思うんですけど、やっぱり演歌は胸の奥まで届いてきます」
 YouTubeにもステージ風景があがっているので、ぜひチェックしてみて欲しい。
「演歌っぽい格好で演歌を歌いたくない、というのが僕のポリシーで。郷ひろみさんみたいに、年齢なんか関係なく、今のモードをちゃんと着ながら、演歌を歌いたいんです。客席には僕の友だちのスタイリストさんも多いから、もう衣装が大変! 変な格好はできませんから(笑)」