子宮頸がんの赤信号が灯り、そこから闘い続ける中で、堀越のりは大きく変わった。
「20代を通じて、私は何者なのだろう? どんな人なんだろう?って、悩んでいました。その答がでないまま、周りからキャラクター付けされてしまうことが、ストレスになっていたんですね。自分が何者で、どこまでできるのかをすごく知りたがっていた自分がいて、ちょうどそのタイミングで子宮頸がんが来たとき、私の中に、仕事では出ないほどの、すごいエネルギーと強さが生まれて、病気と立ち向かうことができたんです。
 病気になると、どんよりしてしまって、医療機関に自分の治療を丸投げしてしまうタイプと、必死になって自力で治そうとする人といると思うんですけど、私は断然、後者でした。相手がどんな名医でも、私が納得できないと質問攻めにしてしまうし、反論もしてしまう。どんどんどんどん前に行けて、自分はこう思う、ああ思うって口に出せる。ああ、私って最終的に強い人間だったんだなって、だんだんわかってきました。そしてだんだん、病気を治すことにワクワクしてきたというか(笑)。誰かが決めた治療法をそのまま受け入れていたら、自分の強さに気づけなかったかもしれませんね」
 病気と闘うその過程で、堀越は自分自身と出会うことができたのだ。
「結局私はすごく強いヤツで、真剣で、ちょっと傲慢で、でも、ちゃんと結果は出す人間なのだと思います」
 そして闘病を終えた今、もっと大人になったときの自分の姿が、見えてきた。
「私よりずっと年上の女性たちのエッセイとか本を読んでいて、発見があったんです。60代や70代、キャリアも積んで、私から見るとできあがって仕上がって、輝いて強く見える憧れの対象みたいな女性でも、必ず何かに悩んでいたり、不安を持っていたりするんですね。ということは私にも、次にまた何かが来るのかもしれない。それでまた苦戦したり、するのかもしれない。女っていうものは面倒臭いけど、ずっとそうなんだろうなって(笑)」
 でもこれからは、強い自分がいるから、大丈夫。今も3月の朗読劇に向けて、稽古を始めたばかりだ。
「長かった髪を切って、この通り、ピンクに染めました。その朗読劇で老婆の役をやるかもしれないので、ロングヘアよりもいいかな、と思いまして(笑)。これからは声のお仕事とかナレーションとか、いろいろ挑戦していきます。よろしくお願いします!」

  • 出演 :堀越のり ほりこし のり

    1982年2月2日生まれ。1998年ホリプロの『第2回夏のお嬢さんコンテスト』でグランプリを獲得し、芸能界デビュー。『くりぃむなんとか』『愛のエプロン』(テレビ朝日)などバラエティ番組を中心に幅広く活躍の後、2011年2月2日に14歳年上の歯科医と結婚。結婚とほぼ同時に芸能活動を中止していた。
    オフィシャルHP http://horikoshinori.com/

    スタイリスト : ミツイ マルセロ

    【公演情報】
    『朗読劇 100万回生きたねこ』2020年3月26日(木)19時開演 座・高円寺2
    http://www.humanb.net/

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    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/