歩いたりバスに乗ったり、麻丘めぐみの日常は、かなりフツウ。
「そう、最近は毎日の買い物も、地元の商店街、それも個人商店のお肉屋さんとか八百屋さんで、お店の人とおしゃべりしながら買ってます。3年前に娘がフランスに留学してから、私は生まれて初めてのひとり暮らしになって、最初のうちは〝気楽で楽しい!〟なんて言っていたけど、すぐに寂しくなっちゃって(笑)。だからお店の人に『実は風邪引いちゃって食欲ないの』なんて弱音をこぼすと『じゃあこれ食べて』ってフルーツをいただいたり、『元気出しなさいよ』なんて言ってもらうと、すごくうれしいの。そういう何気ないコミュニケーションて、やっぱり大事なんですね」
 でも、そんな会話ができるようになったのは、実はつい最近のこと。
「何かに囚われていたんでしょうね。特別芝居がうまいわけじゃないし、歌が上手なわけでもないのに、知らず知らずのうちに〝わたしは役者だから〟とか〝歌手だから〟とか。囚われているときは、自分が囚われているって気が付かないんです。でも、そこからポーンと解き放たれたときに、すごい楽になって、ああ、私はガチガチに自分で自分を縛っていたんだって気が付くんですよ」
 芸能界に復帰して、元アイドルの看板を背負いながらの俳優業。子育てしながら芝居に打ち込んでいる最中には、ヨロイのような自意識が必要だったのだろう。
「それに私、コンプレックスのカタマリだったから。たとえばディナーショーの予定が入ると、何日も前から緊張して、前の日くらいからもう眠れなくて、当日になると逃げて帰りたいくらいの状態になるんです。そんな中で自分でいるためには、突っ張ったり踏ん張っていないと、立っていられなかったんですね。でも自分で力むのを止めたら、すごい楽になりました。娘に言われたんです、『あなた、何やってるの? もう何10年も前からやってきたことでしょ? もっとリラックスしてやれば、万事うまくいくわよ』って。それを聞いて目からウロコでした。『え? そうなの?』って。確かに、そんなに頑張らなくても、その場その場で一生懸命やれば、私、できるんです!(笑)」

撮影協力・関ミート