板鼻美幸は大学を出てからずっと、空間デザインの仕事に就いてきた。ふたりの子どもを出産、その育児休業中に、てのひらアートを始めたり、一級建築士の資格を取ったり。2年前に独立してアトリエサキアンというデザイン会社を興し、ミュージアムの内装やコーディネイトなどの仕事もしている。
「もともと小さい頃から、絵を描くのが好きでした。これってキレイだな、とか、これとこれを組み合わせたらどう見えるのかな、とか、描いたりアレンジするのがすごく好きだった。学校で女の子たちが、隣のB組の色白のナントカ君が好き、と言うのを聞いて、そのナントカ君を消しゴムになぞらえて、描いてあげたり。似顔絵じゃなくて、キャラに仕立てて創作するのが好きだったんですね」
 そこで、『だったらハギニワ氏は?』と無茶ぶりしたら、あっという間に〈カメラ君〉を描いてくれた。板鼻さん、GoodJob!
「大学を出てからは、企業の中で空間デザインの仕事をしていたんですけれど、周りの先輩がみんな優秀な方ばかりで、実力の差を感じてしまい、言いたいことがあっても言わずにすませてしまうような、縮こまった毎日でした。そんな自分から変わりたいと思っていて、結婚して板鼻という名字になったときに、ちょっとうれしいな、と。旧姓はふつうの名字だったので、板鼻になったら全然違う自分になれるような気がしたんです。面白い名前で、面白いことしてみよう、と、思っちゃったんですよ(笑)」
 わかる。名前って意外と、メンタルにも響くよね。
「てのひらアートに参加していただくとき、見ず知らずのおじさまに『手をかしてください』と声をかけてお願いして、スーツの上着を脱いでシャツの袖をまくってもらって、絵の具を塗った手を一緒にギューッと押してもらうんです。終わるとウェットティッシュで手を拭いてあげるんですけど。ふと、自分で、ナンパみたいだなって思って(笑)。そんなことができるなんて、私もずいぶん変わったなって思います」
 てのひらアートの評判があまりに良いので、本業を辞めてこれを仕事に、と思ったこともあるらしい。
「はい、デザインの仕事はもういいかなって、思った時期もありました。でも独立後、ぜひ私に、とデザインの仕事をいただいて、思い切ってやってみたんです。すると、クライアントさんがすごく喜んでくれたんです! そこで、あ、と思いました。楽しいなって。デザインでも、喜んでくれる人はいるんだ、って。だったらやりたい、続けよう、と」
 つまり彼女は、仕事でもなんでも、人が喜んでくれることが、とにかく大好き。
「うれしいんです、うれしくなっちゃう。今は設計の仕事とてのひらアート、両方バランスよく働いています。てのひらアートのおかげでいろいろな人と知り合うことができて、世界が広がりましたし、仕事の幅も広がってきました」
 年賀状とかクリスマスカードにも、てのひらアートはピッタリのコンテンツ。
 年末年始、ぢっと手を見て、あなたならその手を、何に使う?

  • 出演 :板鼻美幸 いたはな みゆき

    アトリエサキアン代表。1981年生まれ、宮城県仙台市出身。4歳と7歳の2児の母。自身が考案した『てのひらアートⓇ』というアートパフォーマンスを、ビッグアートや親子向けワークショップなどさまざまな形で展開中。空間デザイナー(一級建築士)として全国の美術館の展示デザインも手がける。

    『文具のとびら』 https://www.buntobi.com/articles/tag/word/%E6%9D%BF%E9%BC%BB%E7%BE%8E%E5%B9%B8/

    『てのひらアートサキアン』https://www.facebook.com/%E3%81%A6%E3%81%AE%E3%81%B2%E3%82%89%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%88-Sakian-1983676898515455/

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    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/