キネコ国際映画祭の会場を歩いていると、きっとこの人に会えるはず。クラウンの彼、名前はジョーイ。キネコ国際映画祭には第19回から参加している。
「最初は会場の外で、にぎやかしをするだけだったんです。でも中でもやりたい、と僕から直訴して、開演前の客席を回って楽しんでもらうようになりました。それからだんだん、上映前に作品を紹介したりするようになりまして」
 優しい声で話してくれる、ジョーイさんはちょっとシャイで内気なクラウンだ。もともとは役者志望。だけど台詞を言うのが苦手だということに気付いて、途中からパントマイムに方向転換。さらにクラウン修行もして、そろそろキャリア20年になるという。
 ところで、クラウンは、ピエロとは違うんですか?
「日本ではすぐにピエロって呼ばれてしまいますけど、でも僕はクラウン(道化師)です。イタリアの昔の喜劇映画にピエロという名前のクラウンが出てきて、その印象が強かったのか、日本では道化師のことをピエロと呼ぶようになってしまったんですね。だからピエロというのは固有名詞みたいなもの。僕はクラウンで、名前はジョーイ。だから僕を見かけたら〝ジョーイ!〟って呼んでくれるとうれしいです!」
 メイクは自分で考えるんですか?
「クラウンのメイクには3通りあります。顔を全部白塗りにするホワイトベース、目と口の周りだけ白いオーグスト、あとはヒゲとか個性を強調するメイクです。僕のはだから、オーグストですね。で、クラウンのメイクって、ただのデザインじゃないんです。自分の欠点をデフォルメしています。たとえば引っ込み思案だったら、それを大げさに表現することで、そのコンプレックスから解放される。さらに、僕は引っ込み思案だけど元気、君と友達になりたいなっていうメッセージにもなる。だから自分がどういうキャラクターのクラウンなのか、わかってからはじめて、どんなメイクにするかを考えるんです」
 なるほど、クラウンといえば華やかで元気そう、だけど、どこか謎めいていたり寂しそうに見えるのは、そんな意味合いがあるからこそ。
「コスチュームにも、意味があるんですよ。クラウンというのは基本的に子どものキャラクターなんです。大人に憧れて、お父さんの靴を履いている。だからクラウンの履く靴はすごく大きいんです」
 ふーむ、聞けば聞くほど、クラウンて、深い。
「キネコは子どもたちが初めてちゃんと映画を観る場所になるのかもしれないけれど、同じように僕が、生まれて初めて会うクラウンかもしれませんよね。だから、出会いを大切にしたいと思っています。映画を観る前の雰囲気を作ったり、ドキドキしなくても大丈夫だよって、そんな雰囲気作りのお手伝いができるといいなって、思っています」