やってみなくちゃわからない、ということがある。全然興味ないことでも、なりゆきでドアをノックしてみたら、それが天職だった、なんてね。
　今週のＹＥＯ、主人公の久下恭平は、そんなこんなで今、俳優をやっている。俳優になって９年目、芝居をするのが好きで好きで、舞台を中心にどっぷり演劇にハマっているけれど、実はもともと俳優なんて、自分とは縁のない仕事だと思っていた。
「ふつうに大学行って、英語か国語の教師になりたいと思っていたんです。その準備ってわけじゃないけど、アルバイトでも塾の先生をしていました。やっているうちにある生徒のお父さんと仲良くなりまして、よくご飯に連れて行ってもらっていたんですよ。で、行った先のご飯屋でたまたま、隣の席に座っていた人がプロダクションの方で、〝君、今度、俳優養成所のオーディションがあるから、来てみないか？〟って、声をかけてくれました。〝交通費出すから東京おいでよ〟って言われて、タダで東京行けるんだったらいいなあって」
　メインの目的は東京観光。オーディション当日もどっさり買い物をして、紙袋を両手に提げて会場の俳優養成所にたどり着いた。と、そこで見たのは、
「生徒が列を作って教室に入る光景でした。『おはようございます！　○○です！　今日もよろしくお願いします！』って挨拶してから教室に入っていくんです。それを見て、しびれた。カッコいいな、と思いました。次の瞬間、ここで２年間、ちゃんと無遅刻無欠席で通って卒業してみたい、と思ったんです」
　兵庫県明石生まれの久下恭平、それまで見たことのある演劇は、なんばグランド花月の吉本新喜劇だけ。映画好きの両親のおかげで映画は見ていたけれど、芸能人とか俳優は、自分の将来の選択肢になるとは一切思ったことがなかった。けど、そこでそう感じたのは、もはや運命みたいなもの。
「運良くそのオーディションに受かって、両親に大学を辞めて東京の俳優養成所に入りたい、と言ったら、最初は驚かれました。でも父は〝こうやって相談に来た時点で、お前はもう決めているんだろう。やれ！〟って言ってくれたんです。でも祖父と祖母は大反対で、〝せっかく大学に入ったのに、そんな水商売みたいなもん〟って。いつもは優しい祖父と祖母を怒らせてしまったことが悲しくて、どうしようと思っていたら、そこで父がこう言ってくれたんです。〝俺の息子じゃ！　好きにやらせろ！〟って(笑)。それを聞いて、絶対に頑張ろうと思いました」
　そこから９年、久下恭平がどんなふうに今のような役者になっていったのか。今週のＹＥＯは金曜日まで連日更新しながら、久下の頑張りを徹底リポート。人生は、やってみなくちゃわからない。だから面白いんだよね！