大学に進学したむらたたむは、ガールズバンド『SORAMIMI』で活躍。CDをリリースするなど、ミュージシャンとしての第一歩を踏みだした。けれど、2017年にバンドは解散。
「そうなったとき、自分がその後どうするのか、決断の瞬間がありました。実は大学在学中は、学校の先生になろうと思っていたんです。理科の先生、実習もやったし、教員免許も取りました。そっちにいくか、ドラムを続けるのか・・・・」
 決断の決め手になったのは、自分自身の正直な気持ち。
「それまでの人生で、自分で向上心を持って向き合ったのは、中学のときの陸上と、ドラムだけだったんです。
 中学のとき、100メートル走の選手だったんですけど、自分のこの足の短さだと、いつ身体を前傾して、どのタイミングで身体を起こせばいいのか、まっすぐ走るためにはどうすればいいのか、腕の振り方はどうするか、徹底的に研究しました。そうやって記録を伸ばしていたんです。
 同じようにドラムについても、一番効率の良い身体の動きを研究しました。この動きからこっちに移動するのだから、ヒジの位置は最初からこうしよう、とか。そういうのを考えるのがすごい好き。そしてやってみると前よりも確実にスムーズに叩けて、それが快感なんです。人のドラムを見て、なぜこうしているのか、みたいのも、わかるととても、面白い。そうやっていくつも、自分ルールを作っています。
 ということは、これはきっと、ドラムについてはもうワンステップ、上に行ける可能性があるな、と。まだまだ上に行きたい、ということは、このままドラムを続けるしかないかなって」
 イエイ、叩きたいから叩くぜ、みたいなノリを想像していたけれど、人間工学というか運動学というか、身体の動きを徹底的に分析して、頭を使って叩いているのね。
「たぶん、脳みそが重要なんです。たとえばあの、手・手・足・足・手・手・足・足みたいなフレーズを、タタタタタタタタってやるときにどうしても、最初の頃は均等にできない。手と足に切り替わるその瞬間が、難しいんです。そんなときには手・手・足の3つをきれいに叩いてみる。その意識を脳みそに叩き込むと、楽に叩けるようになります。うまくできないときは、なぜ今、うまくできないのかをひもといていくと、意外と単純なところで、解決できるんです」