映画の撮影が終ると、次に編集作業に入ります。撮影した映像や音声を編集して映画作品に仕上げるのです。

「できると思ったんですよ、編集なんて。同じ人間がやることだから、できないはずないって。でも、全然できませんでした」

 1年かけて自分で編集してみたものの、面白い映画にならない。一方的で、観る人に考える隙も感動する暇も与えない作品になっていた。そこで、劇場版編集を片元亮監督に依頼したところ、ドラスティックな変更がなされ、現在のかたちになったのだそうです。

 いよいよ映画『宝物の抱きかた』が完成! さあ上映だ、と誰しも思いますよね。でも、違うのです。

「僕も映画が完成したら上映できるものだと思っていました。劇団をやっているので集客にも自信があった。でも、映画館側が何を求めているか、僕らはまったく考えていませんでした」

 いくつかの映画館に持ち込んだものの、先延ばしにされて、挙句は放置。それはそうです。映画館だってビジネスですから、集客ができるかどうか見極める必要があります。そこで、ショートムービーの上映イベントなどを映画館で行ううちに、ようやく「レイトショーでやってみないか」と声をかけられたのが、現在上映中の吉祥寺ココマルシアターでした。

 上映期間は、まず1週間。ここで結果を出さなければ翌週に繋がりません。監督自らチラシ配りもします。

「僕が監督した作品です。観てください!」

 撮影を行なった日も、実際にチラシを配っていたのですが、ほとんどの人が快く受け取っているので驚きました。

 「チラシは1日500部配ります。毎日同じ場所で配っているので、顔見知りもできました」

 なかには「息子と同じ歳だから」と応援してくれる年配の方や「2回目行くね」という方もいるそうで、反応は上々。吉祥寺という街の懐の深さを感じます。

 監督と一緒にチラシ配りをした使音くん。「僕が出ている映画です!」と言われると断れないですよね。使音くんがいる日は、パンフレットの売れ行きも好調だそうです。

 さて、無事に上映が叶い、ロングランも果たした今、榎本桜さんが次に目指すのは……?

  • 出演 :榎本桜 えのもと さくら

    映画『宝物の抱きかた』監督・主演。劇場を中心に俳優として活動していたが、2013年頃からインディペンデント映画やドラマなどの露出が増える。活動拠点にしている劇団チキンハートは旗揚げから4年半にして1公演で3000人を動員する。

    映画公式HPhttp://takaramono.net/

  • 映画『宝物の抱きかた』
    2017年公開。現在上映中。著名人からも好評で、口コミで延長上映を重ねて、吉祥寺ココマルシアターにて6週目という異例のロングラン。高崎映画祭『監督たちの現在−進取果敢な人々−』特別上映。第3回新人監督映画祭ノミネート。第三回岩槻映画祭招待作品。

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    取材/文:加藤いづみ

    コピーライター。東京都出身。成城大学文芸学部卒。広告、SP、WEBのコピーライティング、企画、コンテンツ開発のほか、企業のPR誌を定期的に編集・制作している。
    Facebookページ(不定期更新)https://www.facebook.com/mi.company/

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/