映画館というと、近年はスクリーン数の多いシネコンが主流になっていますね。そこで上映されるのは全国上映の最新映画やハリウッドの超大作、または話題になっている作品。一方で、ミニシアターと呼ばれる小さな映画館では、独自の基準で選んだ作品が、1週間程度の短い公開期間で上映されています。過去の佳作もあれば、無名の作品も。たまたまミニシアターで良い作品に巡りあったときには、嬉しくなって思わず周囲の人に伝えたくなるものです。
 
 いま吉祥寺のミニシアターで上映されている映画『宝物の抱きかた』は、現在上映6週目を迎えています。無名の作品ながら上映期間を延ばし続けているのは、きっと、観た人たちが誰かにその魅力を伝えてきた結果なのでしょう。

 この『宝物の抱きかた』の監督が写真の人、榎本桜さんです。これまで舞台や映画に出演経験はあるものの、映画監督は初めて。しかも、今作では企画・プロデュースから主演まで一人でこなしているのです。

 初監督作品にして、主演も務めた榎本さん。映画のことはまるで門外漢の私が考えても、撮る側と撮られる側を一人でこなすのは大変そう。撮影中、榎本さんの中で、俳優と監督のバランスはどうなっていたのでしょう?

「バランスは……悪かったですね(笑)。だけど、両方やって楽しかったのも確かです。そもそも、自分がやりたいと思って始めたことですからね」

 聞けば長編映画を撮ると決めてから劇場上映に漕ぎつけるまで4年かかったとか。そもそも、映画を作るには時間もかかるが、何よりお金がかかる。榎本さんは製作予算をどうやって確保したのか? それは思いもよらない方法でした。

  • 出演 :榎本桜 えのもと さくら

    映画『宝物の抱きかた』監督・主演。劇場を中心に俳優として活動していたが、2013年頃からインディペンデント映画やドラマなどの露出が増える。活動拠点にしている劇団チキンハートは旗揚げから4年半にして1公演で3000人を動員する。

    映画公式HPhttp://takaramono.net/

  • 映画『宝物の抱きかた』
    2017年公開。現在上映中。著名人からも好評で、口コミで延長上映を重ねて、吉祥寺ココマルシアターにて6週目という異例のロングラン。高崎映画祭『監督たちの現在−進取果敢な人々−』特別上映。第3回新人監督映画祭ノミネート。第三回岩槻映画祭招待作品。

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    取材/文:加藤いづみ

    コピーライター。東京都出身。成城大学文芸学部卒。広告、SP、WEBのコピーライティング、企画、コンテンツ開発のほか、企業のPR誌を定期的に編集・制作している。
    Facebookページ(不定期更新)https://www.facebook.com/mi.company/

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/